◆はじめて作る古典風ラジオ◆


◇我が家に届けられた古典ラジオの残骸◇

なんとかなりませんか?と、ラジオの残骸が・・・

当時の面影たっぷりの箱・・・でも、蓋がないのです・・・。

 天板が無くなり、中身も殆ど無くなっている古典型ラジオの残骸が届きました。誰が見ても部品取りでしょうか?普通の人から見れば粗大ゴミです。これは最悪の状況ですが、それなりにしてみたいと思います。なぜならば、昔の雰囲気がたっぷり残っているからです。
 このラジオは、大正時代の終わりから昭和初期のものと想像できます。また、この箱とは別梱包で、見事なラッパスピーカーも届きました。


◇別便で届いたラッパスピーカー◇


アルミ製の大きなホーンスピーカー

心配していたコイルは生きていました。


 先に届いた箱とセットにすれば立派な古典ラジオになります。となれば、なんとか復活させたいと思う欲望が出るわけで・・・・こういうのを物好きともいいます。たぶん・・・
 さてさて、取りかかる順番としては、あまり手のかからないと考えたこのラッパから手がけることにしました。しかし、シリコン潤滑油(CRC 5-56だと思います。)がたっぷり吹きつけられベタベタしています。
 この油は機構部まで浸透していてティッシュペーパーで拭き取ると黄色に染まる程吹きつけてあります。なんともまたこりゃ酷いことをしてあるものだ・・・・
 この油には苦労しましたが、洗剤を使ってなんとか除去できました。除去しないと塗装できないのです。


◇分解したホーンスピーカー◇


あちらこちらペイントが剥げ落ちています。

円形状のものはコイル部です。ボイスコイルというのかな??


 この頃のスピーカーは、今のものと構造は違い、ハイ・インピーダンスのコイルです。簡単にいえばマグネチックレシーバの片ユニットを大型化したようなもので、振動板が大きくなったものと思えば簡単です。その先に大きなラッパが付いているだけです。
 スロート部を見れば、経年劣化で塗装も剥がれ落ちています。今の塗料より質が落ちるので仕方のないことです。こういう経年変化を好む方も多く居られるようですが、私は好まないので綺麗にしようと考えます。


◇下地処理中のスロート部と塗り終えた台座◇


台座は鋳物のようで重量があります。

下地もパテ処理等入念に行います。


 銘板も錆びてみっともないので外して研磨そして再塗装しました。この作業は、いつもの如く分解しなくてはなりません。
 分解といっても金槌や鉄鋸で分解するわけではありません。でも、金槌は使いました。夜中にコンコン、カンカン!
 作業中に女房から「うるさい〜!」の一言も頂きました。金槌を使わないと銘板が外れないんだも〜ん!
 分解したら磨いて再塗装ですが、暦は1月です。冬なんですが、まだちょっと気持ち暖かでしたので、休日の度に天気を見ての作業となりました。
 塗装といっても、1度に仕上げられる形状ではありません。乾燥させて裏を塗るというような感じで塗るわけです。色は3色混合で使ってあり、真っ黒ではありません。


◇仮組したラッパスピーカー◇


塗装作業の終わったラッパ

古い物とはいえ見事である。いいなぁ〜と思いますが、買えぬ故に・・・


 直径は測っていませんが、口径は30cm以上はあるようです。大きくて格好良いのであります。じつに・・・。
 どんな音がするのかな?とポータブルラジオのイヤフォン端子からトランスを介して音出しをしてみると、変わった音色がラッパから出てきます。構造上仕方のないことですが、当時はこんな音でラジオを聞いていたのかと思うと、時代的なロマンを感じてしまいます。古めかしい音?
 また、接続コードは、ボロボロだったので袋うちコードを改造してそれらしい太さに作り替えてあります。


◇続いて本体編◇


取りかかる頃は、寒波到来!何もできない季節です。

本体には、肝心な天板がありません。


 これは、気持ち暖かくなってからの作業となりました。蓋は、どんな形をしていたか全く分かりません。仕方がないのでこんなものでいいのかなと、レトロ調に仕上げてみました。
 アクセントとして大きなダイア型を入れてます。欲をいえば同材質が良いのですが、タモの無垢板など高価で手に入りません。また、乾燥が不十分だと反ってくるので、コアを作り両面フラッシュ板としました。
 フラッシュ板なので天板は軽いものです。これに額縁を付け出来上がりとなるわけで、安価に仕上げる最適な方法です。もしも、こういう機会があればお試し下さい。あるわけないか・・・・。
 シャーシは、オリジナルの杉の板を使います。これは、かなりの年数が経ったものですが、ひっくり返せば綺麗だったので使うことにしました。


◇クラッシック風真空管ソケットカバー◇


ST管を使う為、これも自作

使用球は光らなくなった6E5!


 中身は、カラ同然です。さてどんな球を使おうか?となるわけですが、ナス管は持っていませんし、見栄えからもMT管、トップグリッドは除外としました。
 となると手持ちはGTとSTだしダルマ管は、なんとなく、なんとなく・・・・。そこであんぽんちんの頭で考えた末、思いついたのは光らなくなった6E5です。
 管壁に膨らみがありませんが、ストレート管も良いのではないかと思いつきました。しかし、GT管だとちょっと短く、長い6CA7は使えない・・・。ということで6E5を使うことに決定です。
 シャシは、板なのでソケットはそのまま使えません。単にスペーサーで浮かすのは格好悪い!それならば「単ではないスペーサー」なら良いことになるわけで・・・使えないオリジナルソケットの真似すれば簡単なことです。ということで作っちゃいました。
 回路は、苦労して同調させる当時の感覚を出すこととして、再生型にしました。慣れちゃえば簡単に同調できますが、ラッパとセットとなればスーパー候では全く面白くありません。かといって多段増幅は木シャーシなので異常発振の可能性大ということで簡単な0−V−1にしました。


◇6E5のちょっと小細工◇


そのまま使うとなんかみっともないし〜

先端にちょっと細工をすればそれなりに見える!・・・かな?


 マジックアイは3極管で同調表示管です。この蛍光部分が光らなくなるのは意外と早いようです。しかし、光らなくなったとしても、3極管としてはまだまだ立派に働いてくれますので捨てがたい球です。
 仮シャーシでこの球を3本使い、再生ラジオを組み立てて実験したところスピーカまで駆動できる立派なラジオができました。これを使わない手はありません。ヘッドにちょっと細工をすればそれなりに見える?
 他に電池管1A5をOMさんから頂いたのでこの球でも実験しました。聞こえるには聞こえますが、どうも感度がいまひとつ・・・(調整にもよりますが)。これは、コンセントからのアースがとれないのが大きな要因です。しっかりしたアースを取ればバッチリです。


◇仮シャーシで実験中◇


スピーカーもガンガン鳴らすラジオです。

ポンコツシャーシがあると簡単に実験できます。

電池管でも実験しました。


 電池管で気になるのが電池の消耗!フルに使えば数十日でA電池が駄目になるでしょう。(調べていませんが・・・)
 依頼された方に電池管を訪ねたら、気になるのは、やはり電池の消耗でした。チェックや交換の手間暇を考えればやはり商用電源がベストです。アース設備が無くても良いのだし・・・電池管はやっぱりマニア向け?面白いのですが不便さもありますね。
 もう少し大きな音がしないかとAFを2段にしたら歪みが増えて聞きづらくなりました。大昔の球と比べ利得の大きな球なので結局2球で十分だったようです。


◇本体配線◇


昔風にカクカク配線方式を採用

はじめてこんな配線をしてみました。


 オリジナルは2mm径の太い線を使ってありますが、曲げるのが大変です。0.5mm折り間違えたらパァです。
 失敗の可能性の高いものより無難な手持ちの材料を使いカクカク配線にチャレンジしてみました。
 部品はソケットカバー内やトランスカバー内に全て収納してあり、大きな電子ブロックみたいなものになりました。また、当初ANTコイルは大きな径に手巻きで作りましたが、再生側を巻き替えたら極端に感度が悪くなってしまいました。仕方なく既製品の並4コイルを取り付けて完成の運びとなりました。


◇記念撮影◇


古典風ラジオの出来上がりです。

蓋を開けて

なんといっても古典風のマスクがいいんです。


 このラジオは依頼があってかなりの日数が掛かりました。箱に取りかかる頃は寒中のまっただ中、お昼でも氷点下数度の状態が続き、休日は雪が降る始末です。
 大物の塗装や接着などとてもできる状態ではありません。それでも小物を少しずつ作りやっと仕上げることができました。やはり、自然には敵いませんでした。


<2008.03.18>


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