◆東京通信工業 TP−3型◆


これはデンスケの初期型?


 いきなりの依頼品でびっくりですが、重たくて汚れたなんだか判らないものが舞い込んできました。問い合わせてみたところ、昔の某放送局の払い下げ品で動かないので診て下さいとのこと・・・


◇届けられたときの状態◇

重たくてサビとキズと凄い汚れのものでした。


 キャリングベルトが付いた小振りの重たい箱でが、最初はなんだろうと?と思いました。
 工具箱にしては変です。横にはツマミが2個にマイク・ジャックがあります。それに某放送局のマークもあるので、何かの機材であることはまちがいないようです。
 そして、蓋を開けてみてテープレコーダと判りました。しかしSPもコンセントも見あたりません。
 調べてみたところ、東京通信工業株式会社の移動式ポータブルテープレコーダーということが判りました。放送機材ならM-1となりますが、これは民生機に時間積算計を取り付けただけのようです。


◇コントロール部◇

入力端子と操作ツマミ等


 依頼内容は、メカの整備で動くようになれば良く、電子回路は手入れしなくて良いということでした。
 この頃は、他にもいろいろ所用等もありましたので、しばらく物置に入れておいたのですが、何やら下にシミが出来ていました。とりあえず蓋を開け中を覗くとOILがポタリと漏れている様子・・・。なんだこりゃ!
 メカからOIL漏れ?外してみると油で全体がベタベタのドロドロ、コテコテでした。これを室内でひっくり返したりするのはとても無理です。
 灯油とスプレークリーナーを使い歯ブラシでゴシゴシやって、やっと素手で触れる状態になりました。OILは締め増しをしただけですが、大丈夫のようです。
 ガスケットから漏れていたのかな?グリースもコテコテになっていたのでこれが溶け出した可能性もあります。前オーナーの仕業のようですが?
 そうそう、グリースですが、ベアリングスペースは別としても機構部に必要以上にタップリ付ける方が良くいます。これは誤りで、逆に余ったグリスが垂れる、固まる等して他に悪さをします。簡単に蒸発するものではありませんので、薄く全体にが基本です。


◇メ カ 部(その1)◇

これは駆動部の心臓にあたります。


 テープレコーダーというと必ず付いているもの!といえば、モーターですが、何処を見ても見あたりません。
 変なの〜?とあちこち触ってみれば、なんとゼンマイ式駆動ではありませんか!こんなのがあるとも知りませんでした。
 始めて見るものでもありちょっと興味津々!ということで動くようにしてみました。動かない原因はブレーキのゴムです。このブレーキはフライ・ホイールにゴムパットを当てて止めるタイプです。
 このゴムはブレーキのシューみたいな役目をする訳ですが、微量に蒸発するOILの為か溶けて固まりフライ・ホイールにガッチリ固定していました。 これでは動くはずがありません。


◇メ カ 部(その2)◇

遠心力で風車が膨らみます。(奥に見える3個の玉)


 フライ・ホイールはギザギザのある大きな円盤です。これを止めるブレーキのゴムは別のものに貼り替えて対処しました。しかし、完全なものではありません。
 私が不思議に思ったのは、このブレーキ方法です。なぜなら、ゼンマイを最大に巻いた時のトルクと減ってきたときのトルクは違ってくるのでブレーキの利きも変わる筈です。
 なぜこんな方式にしたのかな?と思ってしまいました。古来から有るオルゴールを見れば最良の方法が見つかったのではないかと思いますが、しょせん畑違いとでもいうべきかな?
 一般のゼンマイのシリンダー式オルゴールには、風車が付いています。これはエアーブレーキといいますが、蓋をするとこれがロックされて止まります。 つまりシリンダーを止めるのではなく風車をロックする構造です。
 キャブスタンを手で回すことはあり得ないのでこの方法がベターと思うのですが?まさかとは思いますが、回したのかな・・・


◇ショルダーベルト◇

風化してボロボロ


 箱から取り出すときこのベルトを持って持ち上げたらブチッと切れました。もう少しで落とすところでしたが、なんとか受け止めました。
縫い合わせようかと思いましたが、ペロペロ捲れるし、粉がポロポロ!バックルはサビサビ・・・う〜ん?
 いちや〜めた!これはどうしようもないので切り取りました。どうしても必要なら、100円ショップで315円の紳士用ベルトを買い求めて付けておいて下さい。ということで・・・諦めました。


◇録音再生アンプ部◇

電池管3本で働きます。


 モニターはSPではなく、イヤフォンか、マグネチック・レシーバーでしょう。
 ここは、手入れ無用とのご希望でしたので、手入れはしませんでしたが、手入れはしました。だって手を入れなれければ取り出すことが出来ませんので・・・?
 球は、NECの1U4が3本です。このテープレコーダーを入手した頃、この球は市販されていなくてやっと手に入れたそうです。


◇NECの1U4◇

赤い文字が印象的です。


 電源は、乾電池でB電源は特殊なものらしく大きなスナップが2つありました。A電源は単3が3本でパラ接続です。
 手入れ無用との事でしたが、電池がないのでテストも出来ません。といってもこれだけのものですから、電池を入れればなんとか働くかもしれません。
 このユニットは、ネジ止めではなくスポンジ(当時はヘチマといったかも?)で押さえ込むように固定されていましたので簡単に引き抜くことが出来ます。


◇完   成◇


◇カバーを開けて◇

ちょっと綺麗になったかな?


 また、箱は大きなへこみもあり板金塗装でざっと仕上げました。アクリルも汚れていましたので磨いて取付です。
 ポータブルという割に非常に重たく、これを担いで録音に出かけるのは非常に大変だったと思います。これ以外にマイクとかも持っていったのですから、その苦労は分かるような気がします。
 この頃は、既にDCモーターもあったと思いますが、高価なこと、電池が長持ちしなかったこととかで採用されていなかったのかもしれません。
 ゼンマイを巻いて(何処まで限界か不明だったので、少し重たくなったところまで)約5分程度回転していました。今となっては出番がない機械ですが、録音機器の発展に一役買った「珍品」だと思います。
 面白そうだったので例外として手がけてみました。もしかして、メカだけということだったので、ここまでやらなくても良かったのかな?機構部の分解に組立もあってすごく苦労したけど、まーいっかー・・・


◇斜め方向から◇



◇貼られていた回路図◇



※東京通信工業株式会社というのはSONYのことです。昔の・・・


<2008.11.10>


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