☆ 戦前の箱に5球スーパー☆

このラジオは修理依頼を受けたものです。

 オークションで購入されたそうです。箱から想像するには、戦前のもののようです。
 購入時には、小さく音が出るとのことでした。そのときの画像もお願いしました。拝見すれば、中身は自作の並三が組み込まれています。 
 本来なら、高一か並四が入っていたと思います。オリジナルが残っていれば最高です。とはいえ、オリジナルに沿って修理するのにはかなりの無理があります 。
どうしてかというと、オリジナルに使われている真空管は入手が不可能と思った方が無難で、あったとしても大変高価です。
 また、当時は箱、シャーシはそのままで戦後普及したスーパーに組み替えて使った方も多くいたとも聞きます。ラジオはまだ高価な時代のこと、庶民にとっては当然な選択だったのでしょうか。


お送りいただいた画像


 一見自作の箱かと思いました。横には端子とスイッチ・・・

レトロな形、でも前面には格子などの凝った彫刻はなく平面的なデザインです。


届けられたときの内部



 小さなシャーシがちょこんと入っていました。並三です。昔風にいえば3球ペントード受信機というようです。
 よく見ればバリコンそしてボリュームがシャーシではなく箱に直接取りつけられています。掲示板で情報をお寄せいただきました。
 これより以前の初期のラジオは、ベークや木に真空管などを取りつけたものですが、この頃のタイプになるとありえないとの情報をいただきました。この小さなシャーシには取りつけられなかったので、苦肉の策だったのでしょう。
 しかし、ひどい配線!新型の超小型ケミコンは内部に転がっていた。断線もあり、皮膜を剥いて捩っただけの所もあり大変危険な状態です。


庶民の選択


 冒頭でもいいましたが、庶民の選択・・・・・
 私にぴったりのタイトルのような気がします。また、依頼された方も音が出ればそれなりに、そして他は、一切お任せの旨とのことでした。それならば、いつもの如く"○○製作所"を再開ということで進めてみました。


早速箱から手入れをします。


 レトロなスタイルですが、あまりにも平面的、そして横には穴とスイッチ、これは撤去して穴埋めします。結構面倒な作業ですが、見た目にも良いかと思います。サンドペーパーで表面のざらつきと段差をなくします。
 ついでに剥離しているところに接着剤を流し込みマスキングで固定します。ペーパーをかけていると浮いている箇所が分かります。


塗料の調合、色づけ完了


 クラシカルな色調かな・・・・3色使っています。勿論、ハケとウェスを使った手塗りです。完全乾燥後、またペーパーがけをして更に上薬を塗布します。


木片を追加して自作シャーシをセット


 そのまま、シャーシを作るのには段差が邪魔でツマミの穴までの距離も多く、木片で高さを調整する必要がありました。
 手頃なものがなかったのでホームセンターで購入しました。杉ということでしたが、どうも怪しい、外材には間違いがないようで米モミあたりの芯材ではないかと思います。
 自作シャーシは、ぴったり収まるというメリットがあります。じつは、曲げしろを計算するのを忘れて小さくなってしまったので、作り直しました。
 横のスイッチと端子は撤去、穴埋めもしました。画像では右側面になります。


本体終了


ケミコンを切ったところ

使えなくなったケミコンを利用

 仕切り板の陰にちょこんと見えるのは6WC5の頭・・・・
 調整後、しばらく試験のため受信してみます。2日目のことでしょうか、外部アンテナを付けなくても沢山の局が受信できました。異常なほどに入感します。
 あれ?5スパってこんなに感度良かったっけ・・・そこで、今度は外部アンテナを接続してみます。

 今度は、ボボボボッと発振、外部アンテナを外しても同じです。電源を切り、しばらくしてからONしてみます。
 また外部アンテナを付けなくても沢山受信できます。どうやら、再生式5球スーパーとなっていたようです。(こんな名称のラジオはありません。念のため)うまい具合に軽く発振して再生が掛かったようになっていたみたいです。仕切り板のシールド効果がなかったようです。これでは、具合が悪いので急遽6D6にシールドをしなければならないハメになりました。
 シールドは、当初バンド型でしたが、どうもしっくりしないので、古いケミコンを利用してシールドキャップとしました。


ツマミは外国製で穴が大きい

完成写真とシャフトにパイプを追加したところ


 このセットには外国製らしいツマミがついていました。外国のものはシャフト径が大きいので国産のシャフトではがたつきが多く、あまり好ましくありません。
 少しでもこのガタをなくすためにシャフトにアルミパイプをカットして挟みました。ねじ止め式でしたので、パイプを固定しなくてもネジの力で締め付けられ固定されます。


完成写真とシールドキャップ


 ご覧いただければおわかりになると思いますが、正面のダイアルの窓枠は補修してあります。左側が欠損していました。裏板も劣化していましたので新規に作成しました。
ご依頼いただいた方からメールが届きましたので一部ご紹介致します。

    ありがとうございます。クラシックな色彩とかたち、
   前面の金具の折れの修復まったく分かりません。
   本当に感謝と感激と感動です。
   早速音だしをしてみます。
   わくわくです。ありがとうございました。

 と大変喜んでいただけたようです。このメールをいただき、私も大変嬉しく思いました。

<2005.03.11>


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