ヒノデのゲルマラジオ


ΞヒノデのゲルマラジオΞ


 色あせて、薄汚れたぼろっちい箱にちょこんと入っているメーカー製のゲルマラジオに触れる機会がありました。
 メーカー名は、日乃出電工といいます。カタカナでヒノデが良いのかな?50年くらい前にラジオ少年向けに発売されていたのではないでしょうか。


◇ノスタルジックな形◇

電子工作好きな少年の玩具が正解?


 これは、古すぎて私の記憶に存在しない製品です。なぜならばラジオに興味を抱くず〜〜っとず〜〜っと以前のもの・・・。
 どれどれと裏蓋を開けてみると、なんとも安っぽいラジオ!ポリバリコンとコイルとSD46というゲルマニュームダイオードが入っているだけです。せめてイヤフォンの保護抵抗くらい欲しいかなと思ふところ。また、このSD46というゲルマニューム・ダイオードは今となっては入手不可能だそうです。


◇内部の様子◇

小さなコイルとNECのSD−46が付いているだけでした。


 グレーの線はアースになります。改めて内部をまじまじ眺めると、あれれ?です。それはポリバリコンのフィルムが一枚破れて浮いていたからです。そもそも、このバリコンには保護ケースが付いていないのが原因でしょう。
 これは、きっとメーカーでケチったのでしょう。いやいや、薄いケースに組み込む為、意図的にケースを取り外したのではないのかと・・・?
 このケースがない為、イヤフォンのリード線やアース線が動く度にバリコンに触れてフイルムがバリバリになったのでしょう。バリコンって云うくらいですから・・・?
 まぁ1枚くらい無くても受信はするでしょうがこれでは駄目です。まいったまいった!ポリバリバリコン・・・


◇ポリバリコンの修理◇

いやーこれにはマイッタ!(手前のワイヤーは羽を揃えるための小道具)


 さてさて、問題は壊れたバリコンです。容量はちょいと合わないかもしれませんが、代用品でなんとかしようと考えます。新品など手に入りませんから・・・
 ポリの代用品がないものかと、あれこれと目配り、気配りをしてそれらしき材料になるものを日々探していたところ、窓空封筒に目が留まりました。調べてみると使われているフイルムの厚みや強度が近いような感じです。
 ポリのカットはハサミで十分ですが、取付用のビス穴は小さく非常に困難でした。パンチで抜いたように綺麗にはなりませんが、カッティング用のカッターナイフで対処、薄いし、細かいし寄り目になります。それでも根性でなんとか・・・
 ただ、カット後にクシャミでもしようものなら何処かへ飛んでいって探すのに苦労します。また、指に付いて行方不明になったこともありました。灯台元暗しって感じで・・・・


◇クリスタル・イヤフォン◇

大きな方がクリスタル・イヤフォンです。


 付いていたイヤフォンはロッシェル塩のタイプですが年数を経ているため、まず駄目でしょう。生きていればラッキーだったのですが、調べてみたところやっぱり駄目でした。
 それにリード線も固くなっていたし、どうしようもないのでセラミックイヤフォンに交換しました。並べてみると昔のは大きいんですね。ひょっとしたら昔の子供は耳が大きかったのかもしれない?なんちゃってーー(ウソです。)


◇イヤフォンの中身◇

カーボンみたいなのに薄いロッシェル塩が貼り付けてありました。


 壊れていたので、どれどれと分解してみると黒いカーボン板みたいな上にキラキラした結晶が見えました。残念ですが、この結晶が駄目になっていてウンともスンともいいません。そして、クリスタルイヤフォンはテスターで試験してはいけません。直流には弱いそうです。
 キラキラした結晶、これがロッシェル塩という物質です。正式には、酒石酸カリウムナトリウム(しゅせきさんかりうむなとりうむ)といい、水に溶けやすい性質があります。
 つまり、梅雨時のように湿度が高い時期には壊れ易いということになります。また、夏でも比較的湿度の低い地域なら寿命は長いということになりますね。私のところはそうなのかもしれません?昔から持っているイヤフォンがまだ使えたし・・・・


◇配 線 終 了◇

配線といったって、ゲルマラジオですからあっという間に完成します。


 直したバリコンを取り付けて配線というほどのものではありませんが、一通り終了です。
 気に入らないところは、前記のとおりイヤフォンの保護抵抗が無いことです。これは大した作業でもありませんし、1MΩを追加しておしまいです。
 さて、完成の楽しみとして、早速聞いてみることにしました。普段使っているANTの線につないでみると・・・・やっぱり聞こえました。
 また、付属の電灯線ANTをコンセントに差し込んで聞いてみると、これまた大変良く聞こえます。おまけにアースも必要としません?それに、どういう訳かアース線を付けると音が小さくなるんです。
 変ですね。なんで??と調べてみると、どうやらケースから手へと流れているようで、ケースから手を離すと音が小さくなることが判りました。また、手を離しても音は小さくなりますが、しっかり受信してくれます。これはANTコイルに秘密がありそうで、Qが相当高く200は超えてるのかな?と思います。測っていませんけど・・・
 アースのリード線は邪魔だし、今のところ無用な為取り外しました。またリード線でポリバリコンを傷めないようにリード線を隅っこに固定しました。


◇電灯線ANT端子◇

先端に100Pのコンデンサーが組み込んであります。


 私のところはなんといっても超田舎、まだ電灯線にいろいろ不純物?が混ざっていないのかもしれません。そのため電灯線ANT端子でも綺麗に受信出来ました。当然、空電ノイズも少ないです。
 さてさて、古い玩具ですが子供心にかえってちょっぴり楽しませてもらいました。昔はこんなの買ってもらえなかったろうし、もし持っていたら楽しかっただろうな〜と思いました。
 でも、考えてみたら不器用な上に大きな半田ごてしかなかったし、ペーストを使ってたから多分・・・すぐに壊れてーという運命だったのかもしれません。


○記念撮影○

倍電圧方式には敵いませんが、感度良好です。


 ちょっと前に悪戯した古典風の倍電圧ゲルマと記念撮影です。こうして列べてみるとホームラジオとポケットラジオみたいです。
 ヒノデの方も倍電圧にすれば音量も相当なものになると思います。しかし、当時のものと1MΩを追加したのみで終了としました。今のセラミックだと心配ないと思いますが、この1MΩはイヤフォンの保護のためです。
 ラジオ少年の原点、古いものですが、そんな気分で遊んでみました。でも大人になってからはやっぱり知識が邪魔をするのでしょうか、面白味も半減してしまったような感じです。
 あの頃の想いがよみがえればと・・・何も知らない頃の方がとても楽しかったと思います。


<2010.10.15>


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