HF−5は「トライ・アンプ」と呼ばれていたようです。また、上位機種にHF−82という6V6ppのアンプがあり、HF−5はその兄弟にあたる6AR5ppの8W機となります。 |
訳あって、ずいぶん昔に我が家に転がり込んできたアンプラジオです。前回は簡単な掃除とケミコンの交換で音出し試験をして仕舞い込んでおいたものですが、何を思い立ったのか、またごそごそと引っ張り出して部屋の片隅に転がしてありました。
偶にはこういうのでラジオを聴いても楽しいかなと思い久しぶりに電源を入れるとハムが異様に多くブゥ〜ンと聞こえます。あれ?また壊れたのかな。直すのも面倒だなー。と放っておいたもの・・・ これはケースにちょっとキズがある程度でまぁまあ綺麗な方でしょうか?本当は、再塗装すると良いのですが、スペシャル手抜き編ということで・・・ケースなどいつでも出来るしー |
◇HF−5 トライ・アンプ◇
プッシュボタンが印象的なマスク、ツマミは交換してあります。
そういえば前回は剥きだしのスピーカーで簡単に試験をしただけでした。今回はちゃんとした箱に入ったスピーカーに接いだので、低音までしっかり出るようになり、ハムがとても気になったのです。
まず疑うのはもう1本のケミコン・・・懐中電灯で底を照らしてみれば、小さな穴が空いて容量も空っぽでした。 最初はハムというより爆音でしたが、もう1本交換したら大きなハエさんも何処かへ行ってくれました。このようにケミコンブロックが2本ともパンクしているとは驚きです。 また以前スーパーOMさんにデーターを頂きましたので、今度は各電圧を測ってみました。するとシャシと6AR5のプレート電圧が308Vを示しました。データーでは275Vとなっていますのであれ?です。そしてヒーター電圧も全て高めに出力されていました。 OMさんの話によると、エミゲンして電圧が高くなっているのではないかとアドバイスを頂きました。古いし、相当使い込んでいるようなので可能性は大です。 エミゲンとしても回路図に記入してある電圧と30数ボルトも違います。スピーカーから出てくる音は小さくもなく、歪みが多いわけでもありません。改めて回路図にある「備考文」を読むと「対シャーシ間 20000Ω/V 電圧計でRADIO信号0V時の値」と書かれています。 一般のアナログテスターの電圧計は1000〜20000Ω/Vですが、使用したテスターはデジタルテスターで内部抵抗が高く、測定値に相違が生じるのでしょうか。 |
◇ゆったり配置のシャーシ上◇
見た目はがらがらの状態ですが、放熱を考えれば最適です。
しかし、DCの電圧測定にはアナログよりデジタルの方が正確であることはご承知のことと思います。つまり測定した電圧は極めて正確ということなのでトランスの劣化かなと思いました。
しかし、これと同じアンプをOMさんもお持ちで、同じように電圧が高めに出力されていたとのこと。当然、ドロップして調整されたそうです。 お話によれば、2台とも同じようにトランスが劣化しているとは考えにくく、当時のトランスは全負荷時に定格値になるようにコアボリュームを少なくして、巻数を多くしたトランスを採用していたものが多くあったとのこと。 また、真空管は消耗品であり、メーカーは多少なりパワーの大きさをアピールした製品が普通で、意図的に電圧を上げパワーアップを図っていたとも聞きました。つまり、球の延命化は考慮されていないということです。 しかし、今となっては真空管は大変貴重品で6AR5や5MK9などは品薄も良いところ、消耗品扱いなどはとても出来ません。少しでも長持ちさせたいというのは庶民の願いです。 実際、調べてみると元から挿さっていた6AR5はエミゲン気味ですが、まだまだ十分使えそうです。 |
◇賑やかなシャシ裏◇
大きなプッシュスィッチと旧型CRでギッシリです。ホーローは試験用
L型抵抗に白いCHERRYのオイルコンデンサーが使われていて、シャシ上とは対照的にギッシリ詰まっています。この為シャシー上はゆったりした配置になってしまったのだろうと想像します。
さて、問題はこの電圧です。球の寿命に大きく影響するものですからデーターどおり規格内に収めたいものです。対処としては、2次側を全て落とさなくてはならないのでどうしようかといろいろ考えた末、1次側を落とせば簡単と思いつきました。 大きな電流が流れるので、ホーローやセメント抵抗だとかなりの発熱が想像されます。となると下手なところに取り付けられません。眺めてみてもこれっていう場所が見つかりません。 何かないかと考えたあげく、発熱が少ないようにフェライトコアにリッツ線をぐりぐり巻いて1次側を落とすことにしました。これでヒーター電圧は定格内に収まりましたが、B電圧は依然として高く、今度はこれをドロップしなければなりません。これも発熱を嫌いチョークインプットで270Vまでダウンさせました。 |
◇ちょっと塗装◇
電源トランスのさびはどうも気に入らないので再塗装
偏見かもしれませんが、トランスはアンプの顔だと私は思っています。これが錆びていると、どうもいただけません。コアとカバーは別々に塗装します。
面倒ですが取り外してサビ取り、さび止めとペイントです。乾燥後取り付けてみるとトランスだけピカピカになりました。でも、時間が経って埃を被れば殆ど違和感もなくなるかもしれません。 CHトランスの取り付け位置は迷いましたが、変な風に取り付けてもみっともなくなるので、バランスを考え中間に取り付けました。また、熱吸収を多少でも避けようと黒く塗るのをやめました。それにミツミのマークがあることだし・・・ってことで。 ところでミツミってこんなトランス製造してましたっけ?おそらく外注品だとは思いますが、ガラクタ箱から取り出して使ったものなので詳細は不明です。 |
◇ケースに入れて◇
再点検中!ハエさんが現れます。
ケースはちょっと凝った造りで本体をケースに入れたままメンテナンスが出来る構造です。ひっくり返して裏板を外せばコンデンサーの交換等メンテは容易です。
さて、HiFiとはいえ当時のアンプ、高利得の6AV6をシールドなしに使っている事もありますが、BASSを回すとハム増加、TREBLEを回すとシャーという耳障りなノイズが増えます。また、回路の配置と大きなプッシュセレクターの影響でどうしてもノイズを拾いやすいのかもしれません。さてどうしたものかと??? 試行錯誤でゲインを下げたところハムは減ったものの相変わらずBASSを回すとまたまた復活してくれます。悩んでいたらそれはアースがループしているとOMさんから教えていただきました。 え〜っ?と電源の引き回しや球の配置を改めて眺めてみると、入口から出口まで流れるような配置ではありません。Uの字型に配置されています。 これだと電源ラインやアースポイントの関係でループが出来ても不思議ではありません。あっ、なるほど〜でした。早速アースポイントの変更です。さすがに経験豊富なOMさん!感謝です。 |
◇ハエさん退治!ちょっと手入れ◇
プリ部の利得も下げました。よく見ると何処かが変わってます。
普段はマジックアイのソケットは外します。
若干、給電ラインの変更と探るのに苦労しましたが、アースポイント変更でやっとハエさんの退治が出来ました。このように3つのセクションから成る機器はそれぞれのインピーダンスのバラツキによりノイズの影響を受けやすくなるそうです。
さて、このアンプでラジオを聴く分には問題ありませんが、CDなどの外部機器を接続しようとなるとマグネチックカートリッジやクリスタルの入力だけであり、過大入力で音割れがします。 それにオリジナルのままだとシャーっというノイズも多いし、MGやXtalはもう使うこともないだろうと、初段のGAINを落としてCDを接続出来るようにしました。つまりイコライザー部を撤去ということです。 その昔はレコードプレーヤーをここに接いで音楽を楽しんだアンプであり、モノラル時代のレシーバーということですが、同じモノラルでもCDくらいは接続したいものです。 |
◇記念撮影◇
プレーヤーとラジオがメインで入力端子は少ない
ラジオはというと、そこそこ感度も良く、ちょろんと出ているリード線でも意外と聞こえます。PAは6AR5pp、Drvも6AR5を3結にして使われパワーを稼いでいることが伺えるアンプです。
きっとこれは「HiFiラジオ」に物足りなくなったマニア向けに発売された機器と考えるといいのかもしれませんね。 きっと、これに大きなSP-BOXを接続して、ラジオ放送やレコードを楽しんでいたのではないかと?長閑な時代のアンプラジオだったのでしょう・・・ ※マジックアイは勿体ないので撮影に使用しただけです。 |
◇思わぬトラブル◇
綺麗な火花がパチパチと・・・
これで一段落と喜んでラジオ番組を楽しんでいたら、パチッと時折ノイズが入ります。空電ノズかな?遠くで雷でも鳴っているのかな?と思ってその日は過ぎ去りました。
翌日、またこのラジオの音色が聴きたくなり、帰ってきてスイッチを入れてみるとるとバチッ、パチパチと整流管のソケットから火花が出ました。マグネシウム入りの花火のように白くて大変綺麗で〜す!なんて悠長なことはことは言ってられません。 慌ててスイッチを切り、調べてみたら整流管のソケット、5P,4P間がなんと約330KΩを示しました。見た目には少々変色している程度ですが、整流管は高熱になる為、ベークの内部が焼けて炭化してしまったようです。 ウェハー型のソケットは、長い時間使うと熱で炭化することがあるそうです。こうなると端子間に余分な抵抗が取り付けられたと同じになり、このような現象が起きるそうです。注意するのは高熱になる整流管と出力管です。信頼がおけるのはタイト製、その次にモールド型でしょうか。 ソケットを交換して再び電源ON!何事もなかったように柔らかい真空管の音色が包み込み、ラジオから「明日は冷え込むでしょう。」と流れてきました。そしてB電圧は280Vに上昇しました。(これって、回路図に書かれている値です。) |
これで普通に使えるようになったと一安心です。そういえば同じTRIOのHF−7が倉庫に寝ていたことを思い出しました。
一通りケリが付いたところで後日、そのHF−7を持ってきてみました。 |
これはHF−5より古いのでしょうか。それとも新しいのかな?
操作部分を見ると殆ど同じです。ただBCバンドがDXでなくSHARPと書かれています。当然ですがデザインは違います。正面から見ると面白い形で、野球のホームベースを大きく潰した五角形です。 共通なところはウェハーソケットが炭化して焦げたところ・・・ |
◇HF−7のマスク◇
ツマミなどありませんが、HF−5のデザイン違いかと?
スパーOMさんによるとHF−5より新しくて改良されたタイプだそうです。
HF-5ではプリ部に6AU6-6AV6-6AV6が使われていますが、HF-7では12AX7-6AV6に変更されています。そしてマジックアイも6ME5から6E5で、整流管も5MK9から6X4に変更されてます。当然、電源トランスにも5V巻線がありません。 またパワーアップの為B電圧は300Vとなっているそうです。HF-5の指定は275Vでした。でも無茶苦茶高かったです。 |
◇蓋を開ければ!◇
綿ぼこりが蓄積してます。すんごい!ソケットが焦げてます。
後ろからも確認できましたが、蓋を開ければ恐ろしいくらいのホコリです。指で擦れば周りのホコリも絡み付き、固まりになって捲れる感じでホコリが取れます。
眺めてみるとHF-5とはシャシも違います。それにPAの6AR5は頭が透明になりつつあり、極端にエミッションが落ちている気配です。 また、整流管が1本しかないと思えばなんとソケットが焦げて破損してました。どうもしばらくは1本でドライブしていた様子です。 |
◇赤と緑の銘板◇
この色違いは何か意味があるのかな?年代別かな?
HF−5は緑で7は赤です。HF-7のシャシ裏を眺めるとパラフィン漬けのコンデンサでとても古そうに見えます。
この為、どちらが古いのか判らなかったところですが、予想は外れてHF-7が新しかったということでした。でも発売年等は知りません。古いことは確かです。 そしてPA管はかなりくたびれた球みたいです。何本かは交換されていたので相当使い込んだ様子が伺えました。 さてさて、同じようなのを2台もメンテするのは面倒なので、このまま箱に詰めて“ポイ”です。なんでも整備して大切に使っていただけるという、ありがたい申し出がありましたので、それに甘えることにしました。らくちん、らくちんです。
HF−5は、気が向いたらケースの塗装でもしようかな?・・・と思うだけ・・・かも? |
◇シャシ裏と付いていた球◇
パラフィン漬けのコンデンサがとても古く見えるのです。
TRIOのロゴ入りが数本ありました。これはオリジナルの球です。
お し ま い
<2009.11.25>
※その後、スーパーOMさんから情報を頂きました。
HF−5は昭和32年頃発売されていたようです。当時は、球なしでHF−5PYというタイプがあり、これが13.5Kちょっとだった。ということです。 球なしでこの価格ですが、今の物価に換算すると?多分、相当な贅沢品だったと思います。 |
<2009.12.02:追記>