山へ来た七洋のラジオ(NER-4232/業務用受信機)


 気になる扇形ダイアルのラジオです。といっても普通のラジオではなくて、昔の船舶用の業務受信機です。見てみると潮風で塗装やビス類が、かなり腐食してボロボロになっていました。海から離れている私の所ではこのような心配はありませんが、普通のさび方とは違うということが判ります。
 整備には、手間が掛かりそうですがなんともいえぬレトロ調のマスクが大変気に入りました。


○置き場所に苦労しました○

古臭さい扇形ダイアルに新鮮さを覚える


 このラジオは船舶専用なので、このまま商用電源(100V)は使うことが出来ません。専用の外部電源が必要となります。A電源DC18VとB電源DC200VそれにC電源-60Vが必要です。こんなことは、知らないのでコンセントにプラグを挿せば音が出ると思っておりました。
 このセットに付属していた電源は自作品でどう見ても気に入りません。そこで作り直すことにしました。また、スピーカーのインピーダンスも600Ωというものになっています。これは、OMさんから変換用のトランスや400Ωというスピーカーを手配していただき、いろいろ試みましたが、どうも音が割れます。しばらくはアンテナゲインを絞ったりしてして聞いていましたが、どうも気になり、試しに5KΩ:8Ωの出力トランスに交換してみました。するとどうでしょう、この音の割れが凄く減りました。もしかしてトランスの不良?
 PA管を交換したりしてみましたが、結局この原因は解らずじまいです。
 並んでいるSPBOXは自作で、この中に電源を組み込みました。


整 備 前

乗用車より凄く分厚い塗装がしてあります。それでもサビ!


 ツマミを固定するビスは殆ど錆びて外れません。仕方がないのでドリルで頭を削って外しました。前のオーナーも試みたようで、頭の溝が潰れているものがありました。普通はこういう状態だと諦めてしまうでしょう。
 探せばあるかも知れませんが、問題は同じビスが手に入らないことです。これも新たにタップを切って小さなビスで固定することにしました。しかし、TUNEのつまみはどうしても、どうやっても外れません。これには参りました。降参です。
 考えた末に、ツマミを壊してしまえ・・・という結論に至りました。これは1個だけだし、違うものでも支障はあるまいと・・・。でも、手持ちに似合うものがありませんでした。“後悔先に立たず”とはよくいったものです。
 それでも、なんとかパネルを外すことが出来ましたが、この凄いサビには恐れ入りました。放っておけばこの赤さびはまだまだ中まで浸透して行きそうな気配すらします。


ツマミ類をやっとはずしたところ

 せっかくのラジオが、ツマミ1個のせいで台無しになるのもつまらないものです。パネルはなんといってもそのラジオの顔ですから外観もそれなりに整えたいものです。


やっと外したツマミの複製

既製品のツマミを削って


 なんだかんだといいながらも作業を進めていると、OMさんから「こんなツマミがあります。」との情報をいただきました。
 それは、指示部が彫られている既製品のツマミでした。よく見れば、形は似ています。これをヤスリで削ってペーパーを掛けて磨いてと、似たようなものに仕上げました。
 穴の空いたものが元から付いていたもので、白い線が入っているものが削る前の形です。
 細かなパーツが、手に入りにくい田舎ではとっても助かりました。感謝申し上げます。


塗装後部品を乗せて

配線終了、文字シールも作り直し


 外せるものは外して、サビを落してと作業を進めます。しかし、問題は塗装です。これはメッキがしてあり、その上になおかつクリアーを塗ってあるという凄いものです。潮風がこの塗料も浸透し、メッキも喰い破ってシャシを腐食させていました。全体がメッキ調でしたので、似たような色調が出ないかな〜と、これも試行錯誤です。指先の感覚が難しいのですが、なんとかこんな感じになりました。


調整前の最終点検


 何となく良い感じに出来ました。レトロなラジオです。それにしても大げさなラジオですね。
 IFTの調整後、どのくらい周波数がずれるのかとしばらく電源を入れて聞いておりましたが、一向にその気配がありません。凄いの何の、これが業務用機器の性能なんだと感激。また、受信周波数は誤差範囲内で合っており、調整の必要ありませんでした。全体ではちょっと改造したいところもありますが、余っているSWがないので断念。それでも凄い受信機です。再度納得して聞き入ることしばし・・・


◇小 細 工◇


 再塗装には貼られているシールを剥がさないといけません。これは、電源とかアンテナなどの名入れですからそう難しいものではありませんでしたが、分解掃除しているあいだに正面パネルの銘板などの塗装がサビでボロボロ取れてしまいました。
 これもなんとか復元できたのでラッキーでした。上部写真の中央は剥がれ落ちた文字盤、実際ショックでした。
 このラジオはしっかり作られているようで、普通のラジオのように内部にあまり手を加える事もありませんでした。欲を言えば水晶を追加して、受信モードを増やしたかった事です。これは検討課題となっています。
 他には、受信範囲を広めたいと思いますが、一番容易なのはセルフコンバーターを付加することで、これも思案中です。


作り直した電源


 これもシャーシから作り直した電源です。本体側で電源のON/OFFができるようにしました。これで操作性は良くなります。ただ、SPを箱に入れたこと、そこに電源を組み込んだことで何処かでループしてハム音が若干気になります。初めは箱なしで聞いていたので気が付かなかったのですが、SPは箱に入れることで音が凄く良くなり、低域までかなり出てきます。それで耳につくようになったわけです。
 整備にあたり、OMさん達にいろいろアドバイス、小物の調達までと大変お世話になりました。感謝申し上げます。

 気になるハム音の原因は、トランスによる誘導ハムでした。今は、SP回路をシャシから浮かし全く出ないようになっています。 

<2005.11.30>


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