◇SANSUI AU−D607X◇


 サンスイのAU−D607Xというアンプが転がり込んできました。このシリーズのD707Xという機種を以前手にしていますが、607Xは販売価格に伴い、更にコストダウンを図ったアンプと感じます。
 今回はサンスイらしくブラックフェイスでしたが、触れたときの感触があれ?でした。
 よくよく調べると塗装は見えるところだけ、ウレタン系をさっと吹きつけた程度の簡易的塗装の印象を受けます。パネルはアンプの顔と申しますが、昔のサンスイに比べると質感が低下している感じがします。
 全体の造りは707Xと同じフレーム構造のシャシレス、側板はパーチクルボードでこれがフレームの一部となっています。
 パーチクルボードは年数が経つと湿度によって強度が落ち、ボロボロともろくなるのが普通で湿度の多い環境で使用していると、いずれは側板がボロっと外れる可能性がありそうです。
 私の知っているところでは40年前のパイオニアでSA−100というアンプが現役で今も頑張っているのですが、このように末長く使いたいというユーザーにはあまりお勧め出来るような出来ないような・・・?多分後者


◇それでもサンスイの風格!◇

音創りに拘り続けたメーカーのポリシーがあります。


 さてさて状態はというと少しの間音が出て、しばらくするとプロテクターが働くという状態、ヘッドフォンではプロテクターが落ちても聞こえました。
 これは多分・・・DCオフセットがずれたのかな?でした。案の定、この調整でプロテクター解除です。
 この調整をしたのならついでにバイアス調整もーということで調べたところ片側がゼロ状態でした。Trは逝ってないのになんでぇ〜?
※ご存じだと思いますが、このシリーズのアンプは片側に2台のメインアンプを搭載しています。左右で4台あるというわけです。 


◇イモハンダ?◇

ピンぼけですが、原因はここだ!赤い丸のとこ


 原因が解らないので片っ端からTrをあたってみました。
 正常なCHと比べていけば造作もないことですが、しかし調べても全数なんとありません。
 変だな?とよくよく基板を眺めるとハンダ痕がまあるくなっているところに目が留まりました。まぁ雑なハンダ付けだこと〜、とそこへコテを当てたらコテ先に基板のハンダが吸い取られました。
 そして基板の銅箔には白くフラックスが残りました。ありゃ、イモハンダだ!!原因はこれだ〜
 これはメーカー製にも時折ある事だそうで検査にも引っ掛からずラインを流してしまい経年変化で接触不良が起こりうるのだそうです。
 検査といっても全数検査ではないので仕方のないことかもしれませんね。再半田で駄目だったドライバーにも電流が流れるようになりました。


◇再 調 整◇

チェック用端子で調整が出来ます。


 音が出るようになったのでテスターを用いて再調整となります。この調整はチェック用端子で一通り行えるようになっています。
 変なセメント抵抗だな〜?と思っていた抵抗ですが、この角もチェック用端子のようです。
 その抵抗の間にも3PINの端子がありますが、狭いので専用のプラグを使わないとショートしてアンプがお釈迦になります。
 調整はDCオフセットは元より、特殊なアンプでアースから浮かせた分離型電源となっているのでアース間のバランス調整も必要でしょう。
 他にはお決まりの終段Trのバイアス調整、これは高すぎるとヒートシンクがホカホカ暖かくなり電気を無駄に流すだけです。今の時代はエコが主流?
 かといってあまり低いとサンスイらしい音が出ません。また、見よう見まねで触って壊してしまう方がいらっしゃるようなので調整方法は省きます。


◇左右の音量が・・・?◇

新たなトラブル発生!愛媛みかん?パネルを外したところ


 組み立ててから左右の音量が違う事に気づきました。おまけにバランスVRを回すと所々音が消える状態です。
 VR等に少々のガリはありましたが、まぁ行けるだろうと思っていました。しかしこれは甘かったようです。とっても・・・
 バランスVRは半分まではスムーズに回転しますが、もう半分はガリ、ゴリと何か異物でも挟まっているような嫌〜な感じです。
 これはパーツクリーナーで洗浄後はスムーズに回転し、OKとなりました。このVRはセンターになると中点がゼロΩになるという特殊なものです。
 このVRの問題は解決したものの音量の違いは解決せずです。


◇ボリューム◇

手前がバランス、奥は音量でセンタータップ付きです。


 あれこれ調べてみると音量の違いは音量VRでした。センタータップと3ピンとがゼロΩ、1ピンとは数10KΩです。
 センタータップはご存じのとおりでラウドネス・コントロールの端子です。
 ボリュームは100KΩ2連のBカーブです。センタータップ付の100KΩはデテントしか手持ちがなく、使うにしてもこのアンプにはなんとなく勿体ない気がします。シャフトを削るのも面倒です。
 しかし、センタータップが駄目でも音量の抵抗体は無事なので、ラウドネス回路を外して使うことにしました。またVRは倉庫にあったような記憶もあるし、もし手に入ればいつでも交換出来るし・・・
 ラウドネス回路を外して気がつきましたが、正常なCHの音が大きくなりました。これは損失がなくなったからですが、音にもサンスイらしい重量感が出てきたように感じます。
 もしかしなくてもこのラウドネスでサンスイらしさが幾分薄れていた?そんな可能性もあるかもしれません。
 となると改造してメインアンプとして使うのも面白そうです。当然違うケースにとか、パネルを改造してとかですが・・・別用途発見? おっきいメーターないかな??


◇サビ取り◇

レコードプレーヤー用のアース端子です。


 湿気の多いところに設置してたのかな?それとも汗をかいた手で触って錆びた?
 このままではどうもよろしくありません。気に入らないのでやっと外してゴシゴシすること数時間・・・じゃない数10分!
 赤さびが取れたらピカピカになってきたのでしめしめ・・・です。メッキじゃなくてクローム?赤さびが取れればいいか〜ってなものです。
 RCA端子は材質が悪いのか磨いてもくすんだままでした。でもちったー綺麗になったようです。


◇入 力 端 子◇

ピカピカにはなりませんでした。


 この頃のプリメインアンプにはプリ部とメイン部の切り離しが付いていません。
 その前だと標準みたいに付いていましたが、DCアンプが主流になってからは付かないようになりました。
 使わない方が多い事もありますが、メインアンプが壊れないようにする為の対策でもあるでしょうか。
 これはちょっとした改造で、負荷抵抗とコンデンサーを追加すれば可能ですが、取扱を間違えると瞬時プロテクターが働く可能性がありますし、下手するとボイスコイルを焼き切る可能性もあります。


◇セレクタースイッチ部◇

スポンジがべたべたしてました。


 セレクターは分かり易いように豆電球でポジションが灯るようになっています。
 この表示ランプは1箇所切れていた為に交換しましたが、押しボタンの後ろにはスポンジが挟まっていて、レバーとのクッションの役割をしていました。
 スポンジは経年変化でべとべとに溶けてしまい触るともう大変!手持ちのスポンジをスライスして挟むことにしました。
 右下の白い丸は操作ボタンの裏側になります。そこに黒く見えるのが溶けたスポンジを取り除いたなごり(跡)です。
 このなごりは薄めたマジックリンをウエスにしみ込ませて拭けば簡単に除去できます。


◇内 部 全 体◇

ボリュームは交換してませんが、終わりにしました。


 コストダウンの為でしょうか、メインアンプは片側固定で放熱板にぶら下がった格好でした。
 その反対側はクッションで底板に当たるようになっているだけのもの、名付けて「ぶら下がりアンプ」って・・・
 これは707Xだとちゃんとフレームに固定されています。そしてイコライザーにもシールド代わりの仕切り板も付いています。
 トランスのケースは理解できるものの、コストダウンにしては悲しいと思ったところでした。


◇記 念 撮 影◇

サンスイ伝統のブラックフェイス!

サンスイ伝統のリヤブラックフェイス!うそだぁ〜〜

707Xと607Xのリヤ側


 ご覧のように707Xは銅メッキを施したリヤパネルです。入力端子もPHONOとCDは金メッキを採用しています。
 もうひとつランク上の907XはCDダイレクト端子が付くほかにフレームも全て銅メッキとなり豪華版になっています。もちろん価格も・・・
 サウンドはちょっと軽めですが、やっぱりサンスイです。コストダウンなのか新方式なのか解りませんがシャシレス構造にはがっかりしました。
 というのもサンスイといえば強固な筐体でずっしりの印象が強かったからです。
 それでも強力な電源は変わらず健在です。トランスのネジを緩めたまま電源を入れ、ボリュームの具合をみていましたがジーともウ〜〜ンというトランスの唸り音が全くしませんでした。恐ろしいというか、これがサンスイのヒミツなのかもしれません。
 構造には手抜きみたいなところが見られましたが、やはり拘りを持っていたメーカーと感じます。


<2012.11.30>


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