◇Victor MCA-105 総合アンプ◇


古いトランジスターアンプを手がけてみました。


レトロなTrアンプサウンドを楽しみましょう。みたいな・・・


 昔、某学校にあったトランジスター式のVictor総合アンプと同型が手に入りました。薄汚れてウンともスンともいわない古くさいアンプです。
 この頃のビクターには、SEA(Sound Effect Amplifier)という独自の音質調整装置が組み込まれています。これは、今でいうグラフィックイコライザーの元祖みたいなものです。当時は、5素子(5BAND)が標準だったと思いますので、7素子もあるこのアンプは高級品の部類だったのかもしれません。
 おそらく昭和45年頃の製品かと思いますが、中古市場でも見ることのない全く人気のないアンプかもしれません。でも、ブラックフェイスでレトロな雰囲気が気に入ったので手がけてみました。そうそう、ブラックフェイスのアンプといえばなんといってもサンスイが有名処でした。


◇入手時内部◇

相変わらずボロです。ほこりもすんごい!


 電源コードは、途中で切られていましたが、仮付けでとりあえずONしてみます。この時SP端子には何も付けません。
 そしてSP端子にテスターをACレンジにしてあててみます。この時に数ボルトの電圧が出ていたら要注意です。バイアスの調整ずれもありますが、drvの石が内部リークしている可能性があり、定格を超える電流がSPを直撃するからです。
 これを調べずにSPをつなぐとボイスコイルが燃えることがあります。それも瞬時に燃えて変な臭いもします。(もくもくと経験者おおいに語る・・・)
 ヒートシンクの左側基板にIFTみたいなのが見えますが、流石にOMさん!やっぱり気になったようです。


◇ちょっと掃除◇

トランスカバーにさびが見えたので再塗装


 音が出ないアンプは、はっきり言って粗大ゴミです。今時、こんな時代遅れのクラッシックTrアンプを手にしようなどと考える人はいないと思いますが、古くさいものが好きな私にとってはお宝?どんな音がするのか興味のあるところです。少しは綺麗にして働くようにしてみたいと思います。
 調べてみたところ、セレクターの接触不良やボリュームのガリもありましたが、故障の原因はメイン基板のバイアス調整VRの接触不良でした。この為、電流が流れず信号が途中で寸断された状態だったということです。
 Trでなくて助かりました。古いので代用品を探すのに手間が掛かるし、見つからないことも想定されます。原因が解れば、いとも簡単!それを交換すれば良いわけでー。でも同型がないのでそのパーツを掃除してと・・・。田舎の不便なとこです。抵抗体が逝かれていたらなんともならずでした。


◇電 源 部◇

ケミコン2本は出力コンデンサーです。今では珍しいかも?


 トランスは、200Vや120Vにも対応しています。ということは、輸出もしていたと思います。 作動することが分かったら、基板の再半田と掃除を済ませ、聞き入ることしばし・・・・当然バイアス調整も済ませます。
 聞いてみると現代サウンドのように抜けるような鋭さはありません。Tr独特の音かな?サンケンのPAなのか太さもあり、ダンピングも高いようでレスポンスはまずまず。それでいて湧き出てくるような高音域・・・レトロサウンドです。
 カプリングも各所見られますので、上質のコンデンサに交換すればもう少し繊細な音が再現できそうです。でもレトロサウンドは失せるかも?
 右上の端子群はメインアンプ基板のソケットで、ボードが付きます。


◇SEA基板◇

旧タイプなのでLCの減衰式?原形はバイタートンかな?


 SEA、それは・・・結局使わぬ基板!常時スルーとなる運命なのです。では、何故こんなのが付いているんでしょう?ただの流行・・・?いえいえ、当時はこういうアクセサリーがふんだんに付いたアンプは高級品だったのです。
 手にしたユーザーは、これで遊んで自慢していたのです。そして飽きてしまったのです。たぶん・・・。このように賑やかなパネルですが、このツマミがないとヘンコチョリンなマスクになりそー。
 また、この頃のアンプには、SPのミューティング回路は付いていません。電源をON−OFFする度にボスンとする音は、スピーカにとっても心臓にとっても良くありません。しかし、このアンプの電源スイッチは、ロータリーでoff→Hones→SystemA→SystemB→SystemA+Bとなっていてボスンが出ないようになっています。
 普段からVRを絞って電源を切る癖が身についているので、この点は全く気にならない作りでした。でも、PAの保護回路は、ちゃんと付いています。


◇分解掃除後パネルの取付◇

パネルも手垢やらで汚れていましたので入浴させました。


 お風呂に入れると薄汚れたパネルも綺麗になります。でも側面や天にすり傷があって気になりました。面倒ですが、ぐるりと塗装をします。
 こうすると細かなキズも消えてちったー見栄えも良くなると・・・思います。そして、手垢だらけのツマミもお風呂でゴシゴシします。使われているツマミはアルミの無垢で黒の焼き付けでした。高級なツマミです。(キャビアではありません。)
 以前、先輩から聞いたことですが、パネルに文字が彫ってあるのは高価なアンプと聞いたことがあります。普及機だと、ただの印字だったということです。このアンプも文字が彫られていました。ん〜?です。


◇内部上部から◇

各ブロックが綺麗に配置されています。


 電源、保護回路部−パワーアンプ部−TONEコントロール部−イコライザー部と各ブロックごと綺麗に配置されるアンプは、この頃の特徴でしょうか、1枚基板にゴソッと取り付けられている機械より好きです。
 電源のコンデンサーは、当時としては容量が多く安定化を狙ったもの。メインアンプ部は単独のレベルコントロールを搭載した準コンプリメンタリーのOTLで、単独でも使えるという凝った作りに見えます。また、プリアウト2、AUX2にも単独のレベルコントロールが付いています。
 イコライザーは、3段直結直結NF型のようです。S/Nは・・・こんなものかな???
 変わったところでは、ピンクノイズ発生装置が付いていて容易にスピーカーをベストポジションにセットが出来ます。これは、いち早くOMさんの目に留まった基板です。


◇リヤビュー◇

凄い端子群です。


 流石に総合アンプというだけあって沢山の入力端子です。AUX1,2、TUNER、PHONO1,2、MIC、TAPE1,2にプリアウト1,2です。懐かしいDINコンセントが2つ見えます。
 使わないようなアクセサリーが付いていますが、これだけ豊富に付いていれば、十分遊ぶことの出来たアンプではないでしょうか。レトロなサウンドを聴いてとリあえず満足ということで・・・・


◇記念撮影◇

カバーをしておしまい・・・ぴかぴか


 最後になりますが、このアンプは4chが主流になる以前の製品です。古くから音響製品を手がけていたメーカーだけあり、各所に拘りみたいなものを感じました。
 まだまだ長閑な時代の頃、このアンプで「こんにちは〜こんにちは〜」って聞いてたのかな・・・?


<2008. 8. 6>


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