◇パイオニア SA−810◇


レトロなアンプで楽しみました。


 1960年中半からでしょうか、それまで主流だったセパレートステレオからコンポーネントステレオに変わっていった頃だと思います。
 オーディオが一般的に流行し、60年後半から70年後半にかけてコンポーネントのステレオセットが沢山売れたような気がします。
 まだステレオといっていた時代だと思いますが、テレビのように居間などに置いて家族で楽しむようなスタイルではなく、オーディオは個々人で気軽に楽しむ形に変化していきました。パーソナルとでもいえばよいのでようか?
 また、ステレオラジカセも流行し、その後はコンポーネントもラジカセとステレオの良いとこ取りみたいな小型のミニコンポに変わっていきました。
 ミニコンポが出てからは、場所を取る大型コンポは徐々に姿を消して80年中半頃からは殆ど店頭から姿を消してきています。勿論、無くなった訳ではありません。


◇70年の灯り◇

その昔、カタログか雑誌の広告で見た記憶が・・・


 これはオーディオの老舗のひとつ�堂�音研、現パイオニアの製品です。もう1ランク上のSA−910というのもありますが、これらは中古市場で今も根強い人気がある商品だそうです?(本当は知りません。)
 性能はというとアナログ時代の音響製品ですから、デジタル時代のアンプとは比較にならないでしょう。
 しかし、今時のような鋭い音ではなく、耳にも脳みそにも優しい感じ、勿論迫力もあるサウンドを聴かせてくれます。決して今のアンプが悪いという事ではありません。
 また当時の造りは素晴らしいもので外観はもとより、内部にも拘りが見受けられます。こういう暖かみのある落ち着いた雰囲気を醸し出すのはやはりウッドケースでしょうか。飽きのこない、見た目にも楽しむことが出来る製品だと思います。


◇内部の様子◇

見た目にも豪華版みたいです。


 普段見るところではありませんが、コンプリメンタリーのアンプ、お値段の割にTONEコントロールやら凄い作りです。またTrやコンデンサーがこんにちはしているのはちょっと淋しいですが、基盤のレイアウトもほぼ対称にするなど拘りが見られます。 
 お値段の割といっても40年近く昔のお話・・・たぶんほいほいと購入できるようなものでは無かったのかも?となればやっぱり高価なアンプだったような気もします。まだ「がきんちょ」だった私には指も爪も出ませんでしたが・・・
 この頃のアンプといえばブロック別に基盤が配置されている製品が多く、回路を追うのも割と容易なのが特徴でしょうか。
 上左からEQ-AMP、右がフラットAMPその下がメインAMPの基板となります。TONEはシャシ下に組み込まれていました。
 上記の他にシャシ下はというと電源基板とプロテクターコントロールの基板が付いています。


◇コントロール部◇

ローターリー式の凝った作りです。VRは普通のでした。


 入手したのは随分前のことです。倉庫をゴソゴソしていたら出てきました。
 どれどれ昔の音でも楽しんでみよう。と持ってきました。入手時は電源を入れたらプロテクターが解除したのでOKだと思っていたのですが、ノイズが出ていたし実際は30分ほどしたら「カッチン!」・・・あれれ??でした。
 この原因を突き止めようと蓋を開けてみれば、調子が悪くなって前オーナーが修復を試みた様子がありました。その後は電源を入れても15秒程度で落ちてしまいました。
 ハンダ付けの痕跡を見れば修理屋さんじゃないことが判ります。どういう訳かコンデンサーが2個だけ交換してありました。他は再半田をしたのでしょうか、初段の差動部のTrにその形跡、更に少々パーターンを捲ってしまったところもありました。
 修理屋さんは絶対こんな事をしません!と信じている私です。出したこともないけど・・・・


◇DCオフセット◇

OCLのTrアンプにはつきものです。


 プロテクターが落ちていてもドライバー段には電圧が印可されているのでそれなりの調整が出来ます。
 まず疑ったのは調整ずれで、DCオフセットの調整です。(DCバランスともいいます。)この調整VRをそろりと少し回したところで解除になりました。
 それでもいい加減な調整ですからまだ1Vくらい出ています。今度はSP端子にDCが出ていないかテスターを当て0Vになるように調整して完了です。
 テスターは2台あると左右の調整が容易に行えて大変便利です。大きく狂っていたのは前オーナーが手を加えたL-CHでありました。
 R-CHは1V以下でしたが、これではまだ高いので極力ゼロにします。
 調整は片CHあたり2箇所あり、DCオフセットとバイアスの調整があります。これには相応の知識と経験が必要不可欠です。壊してしまうだけなので無闇に触らないで下さい。

 また、アンプによって調整VRの付いていないものもあります。これは廉価品に多く見られます。


◇いろいろなトランジスター◇

中央のA726は不良、使用したのはいちばん小さな115というもの


 次にノイズの原因ですが、R-CHの初段の差動アンプの2SA726という有名なTrの寿命のようでした。
 とりあえず丈夫な東芝のA1015と付け替えてみたところ、なんとかそれらしく働いてはくれますがどうも歪みぽいところが気になります。
 この程度でしたらエミッターやコレクターの抵抗を調整すればなんとかなりそうですがメンドーであります。
 そのまま使える代替えとしては2AS999というのがあるそうですがこれも音が変わるそうです。
 どうせ変わるなら好みにあった音がするTrに限るので手持ちの中からいろいろ探してみたところ115という小さな三菱のローノイズTrが目に留まりました。
 規格を見ればちょっと増幅度が多いくらいで電流も多く流せます。つまり丈夫な石ってことなので早速これを取り付けてみました。
 少し細いような気もしますが、透明感は失せることなく、あまり遜色が無いことが分かりました。このアンプの特徴である低音もばっちりみたい。締まりが出たかな?
 ただしこのアンプに限ってだと思います。たまたま全段直結アンプじゃなかったので良かったのかもしれません。
 メイン部にはカプリングコンデンサーが入り口と差動アンプ部の出口に使われています。差動アンプって何?って思ったら勉強してね・・・今は殆どオペが主流だけど。
 もしかしたら前オーナーはこのノイズを直そうと試みたのかもしれません。でも反対側です。痕跡からしてTrを入れ替えたのかな?


◇中身の完成◇

コンデンサーもある程度交換、黒い部分はシールドカバーです。


 普通なら全数交換があたりまえと思う方も居ると思います。
 でもコンデンサーの全数交換は全く意味がないのでそんなことはやりませんが、このアンプは一部分交換されて、見た目に格好悪いのでそれらしく交換しました。
 しかし、パンクしていたり容量抜けが確認されたら必ず交換作業が必要になります。
 また、電解コンデンサーがパンクしていた場合は、何処か他の箇所、かなり広範囲に逝っている可能性があります。
 今までの経験上、真空管用とは違いTr用のコンデンサーは意外と丈夫のようです。
 無闇に全数交換しても気分と見た目、それに財布が軽くなるだけでしょうか?音質に拘るなら抵抗器も「オーディオ用カーボン抵抗器」に、VRも「アッテネーター式」に(メーカーによって音も色々変わるかも?)交換するくらいの度胸が必要でしょう。
 となると電源トランスも容量の大きいものに交換して電源強化?!


◇プロテクター基板◇

ミノムシクリップが付いているところです。


 そして、アイドルの調整とDCオフセットの再調整後のモニター2日目のこと、連続再生で数時間くらい音楽を楽しんでいたらまたカチッと働きすぐ解除となりました。
 こうなると完全にプロテクター回路が怪しいと読めます。そこのTr2個交換して70年サウンドが完璧になりました。
 これは寿命なのか、調整中プロテクターに無理が掛かったかですが実際は分かりません。古いから寿命ということにしておきます。
 このタイプはパワートランジスターの急激な電流変化を太いコイルから読み取ってリレーを制御しています。他社製品にも同じようなのが付いていると思います。


◇整  備◇

くすみは生き残ってきた証ですね。

材質がよいので磨けば輝きを取り戻します。

全体に綺麗になりました。こんなものでOKとします。


 この頃は金メッキ端子はまだ普及していませんでした。従ってこういうクロームメッキが普通です。
 くすんでいても根気よく磨けばピカピカになります。ただし絶対にサンドペーパーで磨いてはいけません。
 手短にあるクリームクレンザーをウエスに軽くしみこませて擦れば大丈夫かもしれません?

 磨き上げたところで普通に使えるようになりました。しかし、やはりというのか、こういうプリメインアンプは単体のプリアンプと違い、専用のヘッドフォンアンプというのを設けていません。
 これはスピーカーをドライブできるアンプを積んでいるので必要ないという考えです。
 それもスピーカー出力に抵抗を入れてあるだけの簡易的になものでぴたりと合うヘッドフォンはなかなかありません。やはり無音時に微かに聞こえるシャー音が気になります。


◇気になる微弱ノイズ◇

発生の源はここからでした。


 モニターに使用したのはDS-251とSB-100いうレトロ品ですが、このノイズはスピーカーで聴く分には全く問題ありません。
 ところがテクニカのヘッドフォンをジャックに差し込んで聴くとミスマッチなのか微かに発生するシャーというノイズが気になります。
 調べてみたところメインアンプ部でなくプリアンプ部、更に調べるとVRの後のフラットアンプのところの模様です。TONEをスルーしてVRを絞っても聞こえます。
 ここはナショナルのローノイズタイプのTrが使われています。
 これって確かローノイズで定評があるナショナルの石のはずですが、それが弱ってしまったか抵抗値が変わってしまったかでしょうか?

 待てよと、CD時代のプリメインアンプにヘッドフォンを挿し込んだところ、これも結構発生しているようです。やはりインピーダンスのミスマッチが原因ですね。
 Trの代替品も見あたらず・・・まぁヘッドフォンで聴くことも殆ど無かろうと、逝ったら逝ったときかな?今のところスピーカーなら全く問題ないし、交換も難しいものでもありません。
 それに70年の初期、アナログ時代のアンプです。残留ノイズが少しくらい多いのは普通です。そんなのアンプを使いながら育ってきたと思えばなんてことないのかなと。

おしまい・・・・


<2012.11.19>


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