◇パイオニア TX−810◇


レトロなチューナー


 TX−810はSA−810のオプションでしょうか。いえいえアンプにデザインを合わせたステレオチューナーです。これがひとつの筐体になるとステレオレシーバーというものになります。
 当時はバリコン式が普通で、ダイアル窓は横型が主流でした。一部には丸型のダイアルもあり、サンスイとビクター(他にもあったような?)が販売していました。
 丸型はどちらかというと廉価品だったでしょうか?古いところではビクターの一機種にあり、個人的には緑色に輝く丸型が好きでした。
 また、パイオニア、東芝のオーレックス、デンオン(今のデノン)などはブルーのバックライトだったと思います。これもクールで良い感じでした。


◇アンプとセットで◇

グリーンも良いけど、このブルーの輝きがまた良い雰囲気!


 懐かしい昭和の雰囲気がいっぱいのこの感じがたまらなく良いのです。安定度といっても通信機器じゃないのでクリアーなFM放送を聴くことが出来ればそれでよいと思います。
 70年頃からでしょうか、エアチェックというのが流行し放送をカセットテープにまたはオープンデッキに吹き込むのが流行りました。
 その頃は一週間の放送予定が載った雑誌も結構売れたようです。これが流行った理由はカセットテープの普及でしょう。
 コンポタイプのカセットデッキも当時は沢山発売されていましたね。それに伴うメタルやクローム、ハイポジションテープ!これらテープの音質向上が一役買っていたのでしょう・・・。


◇フロントエンド周り◇

FM4連、AM3連バリコンが採用されています。


 入手時は最悪でFMもAMも受信しません。メーターランプも切れていました。
 しかし、蓋を開けてみると、やはり1ランク上位の機種ですね。FM4連、AM3連バリコンが採用されています。普通のは良くてFM3連、AM2連ですから・・・
 それでもFMは、まぁ普通のような気がします。AMはこういうチューナーの音で独特の細い音色です。どちらかというと木箱のST管ラジオの方がうんと良いです。
 こういうチューナーで素晴らしい音色がするのはTRIOのKT−8005かな?今は倉庫で寝ているので聴くことが出来ませんが、これがAM?というほど良い音がしました。流石にTRIOさん!でもレトロぽい感じの音色です。
 そして我が家は現在、PLLシンセサイザータイプのチューナーになっています。アハ・・・


◇受信メーター部◇

見にくいですが、ゼロ点がずれていました。

カバーを外して調整します。ついでにランプ交換も・・・


 こんなメーターですから、というのもなんですが、やっぱりずれていると気分的によろしくないのでゼロ点に合わせます。
 古くなるとヒゲバネが伸びるのかな?シグナルはプラス側、センターメーターはマイナス側でした。伸びて縮んでか・・・
 メーターの分解は慎重に行わないと針が曲がったりバネを駄目にするので注意が必要です。


◇FM受信中◇

ヘッドフォンアンプが付いているのでこれだけでラジオが楽しめます。


 中身を見ればお判りのようにチューナー部は殆ど日立製のICチップで構成されています。
 このICというのは回路の一部が壊れただけで全部駄目になります。
 小型に出来るメリットがありますが、壊れたら全部交換で一部交換が出来ません。これが短所です。
 このチューナーはしっかり使い込まれたか、聴きもしないのにアンプの電源を入れたら必ずONになっていたかです。
 想像するに、たぶん後者だと思います。レコードを聴くときも、テープを聴くときもこの美しい灯りを見ていたのではないでしょうか。
 一種のビジュアル・・・どちらかというとパイロットランプ代わりかな?こういう使い方をすると勿体ないし、寿命も確実に短くなります。


◇整 備 後◇

チップとFET1個だけ交換しました。


 電源を入れてヘッドフォンでノイズを聴いたらすぐ判ってしまうくらい簡単でした。
 FM・・・・弱いザァーという音だけ
 AM・・・・局発しているような音は聞こえるけど受信しない。
 シールドカバーを外せばパイオニアと書かれた日立のチップ HA11376(FM用)とHA11738(AM用)が目に留まります。
 フロントエンドのバリコンに触れても変化無し!となるとそこからの回路が駄目になっている訳です。いうまでもなくここから先はチップしかありません。


◇交換したFMとAMのチップ◇

左が不良、右は新品です。日立製ですがパイオニアのロゴが入ります。


 回路を追うにしてもチップしかないのでこれの交換という簡単な作業でした。
 ただFMは重傷で交換しても感度が悪くIF段それからフロントエンドトップのFET交換までとなりました。こんなチップは特殊なので通信販売で購入しました。最後の1個だったみたい・・・ラッキー!
 電源トランスは斜めに取りつけられています。これはトランスから発生する磁気の影響を受けないようにするためだと想像します。
格好悪いですが、性能優先というところでしょうか。円筒形なら格好いいと思います。


◇シールドカバー◇

チューナー部にはカバーが付きます。文字が格好いい・・


 この時代ってそれなりのコストダウンは測っていると思いますが、しっかりした造りには感心させられますね。
 メーカーのポリシーというかプライドを掛けて造られたような気さえします。それに比べ今の製品って・・・言うのはやめよう悲しくなるから・・・・


◇ステレオインジゲーター◇

ステレオ放送は赤く表示されます。


 このチューナーはブルーの灯りを拝みたくてゴソゴソしたわけですが、FM、AM共に受信なかったのは傷手でした。
 筐体の造り、灯りが美しいので復活を試みたものです。勿論、AMは真空管ラジオみたいな音はしませんがローカール局は非常にクリアーに聞くことが出来ます。
 こういうのってやっぱりアンプとセットが画になるような気がします。カセットもあった方が良いのかな?

昭和の灯りでした・・・おしまい


<2012.11.20>


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