2A3シングルアンプの移植


  2A3という真空管はあまりにも有名な球ですから、あえてここで説明する必要はないでしょう。
 とにかく独特の透きとおった中高域、図太い低音が魅力の三極管です。これに輪をかけたような独特の音色を放つWEの300Bという球もありますが、高価な故に手が出ません。
 他メーカーでもこの球を作っていてWEより安価で売られていますが、ほいほいと手が出せるものではありません。私には・・・
 まぁ、それはさておいて、熱のこもりが気になった古いアンプをなんとかしようと自作したシャーシに移植を考えました。


◇仲良しこよしの2A3◇

球が近くて熱のこもりが気になりました。この時は6CG7でドライブしてました。


 目標はやっぱりノスタルジックな2A3のサウンドを目指します。というのもOMさんがトーキー時代でしょうか、2A3のプッシュプル(モノラル)を組み立てていらっしゃいました。これに刺激されたというか何というか・・・。
 シングルよりはパワフルで、出てくる音も想像できます。モノラルとはいえ大変羨ましいPPアンプです。
 これはシングルなので、とてもそのサウンドには追い着きませんが、同じく2A3ということで自作シャーシへ移植開始です。
 球の持ち味を楽しむのならシングルアンプが良いといわれますが、プッシュプルの力強さを引き出そうととするとシングルでは無理があります。


◇2A3ppモノラルアンプ◇

勝手にお借りしたOMさんの作品です。とても良い音がしそうです。


 移植にあたりパーツ類は、古いものからほぼ流用、当然ですがタムラのトランスは勿体ないのでそのまま再利用します。なんでもこの出力トランスは2A3用に特注したものだそうです。
 思い起こせば、遙か遠くのその昔・・・お店の薦めで半分押し売りみたいなトランスだったような?考えてみれば高い買い物だったような気がしています。
 しかし、このトランスのお陰で、このアンプは随分助けられているような感じもあります。ってことは良かったのかな??
 このようにパーツ類は極力再利用ですが、コンデンサーや抵抗はある程度新調しました。その他は手持ち品でなんとかしました。
 


◇幅広になったシャーシ◇

見た目に放熱は大丈夫みたい。分からんけど・・・型番はSE−4989といいます。


 使用球はUSRと書かれたその昔OMさんから頂いたペアチューブです。生産国は日本のようですがよく分かりません。でも三極管が2つ入った大きな球なので2A3とすぐ分かります。
 フィラメントはスプリングで吊してあって丁寧な作りの球で、RCAの球と比べるとその違いがよ〜く分かります。
 でも、良く眺めてみるとユニットの色合いといいマツダの真空管にとてもよく似ています。もしかしたらマツダのOEMかもしれません??あいにくマツダの2A3は倉庫の何処かへ雲隠れしていて比べることが出来ません。
 整流管も2A3と一緒に頂いたもので5U4Gという外国製の球ですが、これもフィラメントはスプリングで吊してある球です。
 初段は12AU7そしてドライバーに12BH7と全て12Vの三極管に統一してみました。12BH7はヒーター電圧の違う6CG7、6FQ7でも差し支えありません。
 これらはパラレル接続で使用し、2A3をドライブするのに必要な電圧まで持ち上げてやります。


◇2A3と2A3◇

RCAとUSRと言うべきですが・・・作りの違いが判ると思います。


 RCAとUSRの球で出てくる音が違うかと言いますとそんなに大きな変化はなかったはずです。人に言われてなるほど・・そうなの?・・くらいかな?
 このRCAはスペアーに購入したものですが、タダで貰って予備球とかトランスやパーツと余計な投資をしたような?「タダより高いものはない」というのは本当のことのようであります。
 さて、ご存じだとは思いますが、球のアンプでもTrアンプでも電源を入れてから15〜30分程暖めないと安定しません。その後は音に丸みというか、とげとげらしさが消えるというのか微妙な変化が出てくるものです。多分、これがそのアンプ本来の音色だと思います?
 マニアの中には1時間暖めてから聞くという方もいらっしゃるそうです。電気代は勿体ないですが、これなら確実ですね。

 関係ありませんが、球を挿し替えて微妙な違いがすぐに判る方は凄いと私は感じます。というのも30分くらい前に聞いた音を覚えているという事になるので、なんとも素晴らしい能力をお持ちだからと感じるところです。
 だからいろいろ評論が出来る訳ですね。残念ながら私は持ち合わせていないようです。でも同じ曲を繰り返し聞いているとボーカルや打楽器のニュアンスに違いを感じるのは気のせいかな??


◇いろいろなコンデンサー◇

これで音色が変わります。


 アンプ入門者に最適なシングル・アンプです。教科書のように簡単で素直なCR結合というシンプルそのもの!シングル・アンプというよりシンプル・アンプというべきかもしれません?
 音色は抵抗より結合コンデンサーによって太かったりか細かったりします。それを試す前に電源部は強力である。ということが条件です。
 音の素早い立ち上がりに追いつかないようなレギュレーションの悪い電源は音に現れるからです。ただし、小さな音で聞く深夜アンプはそれほどでもないかも?
 コンデンサーは個人的に好みなのはOILです。チューブラの・・ほかにフィルムコンデンサーも高域にかけて良い感じがすると思います。
 余裕がありましたら、写真の中にもありますが、高価な音響コンデンサーがお勧めです。でも月とスッポンほど違わない・・かもしれません。好みにより選択をお勧めするところです。
 とりあえず今回はフィルムコンデンサー(メタライズドフィルムコンデンサー)というのを使ってみました。OILよりちょっと細身な音になりました。


◇配線開始◇

とりあえずAC電源の入力側から始めます。


◇配線進行中◇

暑い夏は少しずつが基本です。集中すると暑さも倍増するのです。


 暑い盛りになんでこんなことせにゃならんの・・・?というくらい暑い夏に半田ごては厳しいものがあります。
 こんな季節なので数本の配線を行ったらもういやだ〜!また明日・・・そんな感じで進めました。
 このアンプのフィラメントはAC点火です。従って下手なアースラインになるとハムが出やすくなり、ループが出来ないように、アースラインに余分な電流をのせないようアースを引きます。
 最後にハムバランサーで調整してスカッとハムが消える状態でなければなりません。これは、アースについて少し熟知すれば1ポイントアースに拘る事もないってお分かりになると思います。
 そんなことを頭に入れ配線を進めます。


◇配線進行中 その2◇

>

配線材の方がめちゃんこ多くなりました。


 2A3という真空管は感度が悪いというか効率がよろしくないので入力電圧を高くする必要があります。入力トランスを使わないで初段1本だとまともに動かない為、2本でドライブです。
 12AX7AのSRPP(シャント・レギュレーテッド・プッシュプル)だとドライブできますが、ヒーターバイアスが面倒なのであります。これを無視しても働きますが、12AX7Aの寿命に関係してきます。絶対壊れる・・・
 広くなったシャーシに球1本じゃさみしいし、バイアスはメンドーだし・・ってなれば、おきまりの如くフツーのCR結合となります。トラブルも少ないです。
 何処に片づけたのか忘れるくらい長いことほかって置いても普通に働いたし・・・


◇終わったかな?◇

下手くそな配線ですがご勘弁!それでも、ちゃんと音が出ます。


 CRパーツより配線材で賑やかになってしまいましたが、やはりシングルアンプです。のんびり進めざるを得ない状況でしたが、取り付ける部品が無くなってしまいました。ってことは、いちおう終わり!
 じゃあ点検して、球挿して灯入れ式!・・・お楽しみの瞬間です。
 電源ON!・・・すると何のこともなくちゃんと増幅してくれました。ぶ〜んという音も一緒に・・・・ありゃりゃ!
 これってあたりまえ、まだ調整してないもん!裏に取り付けてあるハム・バラをそろり回して、ぶ〜んという音がしなくなるようにそろりそろり調整します。
バランサーの中間あたりでスカッと消えたら大成功になりにけり・・・・この調整で ぶ〜んが消えない場合は配線ミス?というよりアースにトラブルがあるといえるかもしれません。
 ハムの原因は大きく分けて何種類かありますが、B電源のリップル、トランス、整流管による誘導ハム、そしてアースのループ、部品の不良等があります。
 普通はワンポイントアースとするのがアマチュアの法則ですが、初心者なので3点アースにしてあります。正確には4点ですが・・・。
 結果としてはSPに耳を付けてもハム音は確認出来ないほど静かなものです。ヘッドフォンだと聞こえるかもしれません?
 最初からDC点火にすればさほど神経を使わないかもしれませんが、トランスの都合でやめました。ただし、Di整流にすれば可能です。でもシャーシがさみしい・・・


◇ハム・バランサー◇

調整は裏板を付けても出来るようにしてあります。


 出来た出来た!このアンプは移植なのでこれといって悩むところはありませんでしたが、シャーシ作りに時間を費やしました。
 全体の70%以上だと思います。成果としては、気になっていた熱のこもりは解消されたようで、シャーシも前ほど熱くなりません。
 これなら数時間使ってもな〜んも問題なし・・・勿体ないという声はありそうですが・・・。
 シャシのデザインは昔流行ったノスタルジック風?そんな感じだと思います。


◇記念撮影◇

出力端子は手持ちのジョンソンです。ちょっと長くなります。


◇聞き比べ中◇

昔作った42シングルと聞き比べ・・・


 42シングルは、三極管接続です。スーパーの低周波増幅にちょっと手を加えただけですが、元はラジオみたいにいい音しないかな〜?って悪戯に組み立てた簡易アンプです。
 ところがどっこい、古いトランスを使っているにも関わらず、これがまた良い音を奏でてくれるんです。パワーは控えめですが、この鳴りっぷりには満足してます。小型スピーカーも堂々とドライブしてくれるのには驚きました。
 電源トランスは防磁加工もしてない古いものだったので誘導ハムに悩みましたが、銅板を巻いて、出力トランスを少し異動して解消しました。
 さて、どちらのアンプが良いかというと・・・?どちらも良いのでありました。息子は見た目に可愛い42の方が良いといってます。でも、あげないよ〜!


<2011.09.09>


【ラジオHome】