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トリオステレオプリ・メインアンプの修理(その2)


 このアンプは、スーパーOMさんに教わってなんとか音が出るようになりました。とりあえずですが・・・
 そして大切に保管と、屋根裏部屋に仕舞っておいたのですが、都合で母屋を改築することになりました。当然、入れておいたものを全部移動させなければなりません。
 片付け時は、姉妹も手伝いに来てくれ「手伝ってやるから・・」と運び出してくれました。
 「ひとつずつ持ってね。」と念を押したのに二つ重ねて運び出したのです。
 当然、滑ってガッタン、ゴットン、ドッスン!・・・階段からW-41が転がり落ちてしまいました。調べてみたら球は、無事で一安心ですが・・・、ケース右下カドがぐちゃぐちゃに潰れてしまいました。固定ビスも引きちぎれています。その他SWも転がり落ちたショックで接点がずれたのか、接触不良が発生したみたいです。
 とりあえず大破には至らずで全く良くありませんが、良かったと・・・ぐすん!


◇パテ処理後のサンダー処理◇

グニャリを平らに・・


 また気になったまま、お蔵入りとなりました。しかし、どうも気になるので、また手を入れてみることにしました。
 まず、ぐちゃぐちゃになった部分を叩き出し、荒削りしてパテ処理から始めます。そのまま数日間乾燥させてサンダー処理となりますが、思ったよりダメージがひどく、曲げてある箇所に一部亀裂が生じていました。これは裏側から大きなコテでがっちりと固定です。
 ケースカラーは、メタリック調の凄く明るい黄土色系です。でもこんな色は特注しないといけないので、ちょっと黄土系のメタリック調にしてみました。


◇再 塗 装 後◇

なんとか復活したようです。


 この際ついでですから、以前、耐圧不足で仮付けだったコンデンサーを交換しようと考えます。
 しかし、改めてシャシ裏を眺めてみるとメーカー候の配線方法です。これが決していけないということではなく、なんかまとまりがないような気がして、どうしようかな、このままでも良いのかな?と・・・
 シャシは、まだ極上品の部類だと思います。しかし、良く見るとトランスに少し錆が浮いてきています。長く保管するのならトランスは、再塗装かなー。と思います。


◇ト ラ ン ス◇

古いのでやっぱり錆が出てきます。

カバーを外せば端子式でした。メモ書き程度に端子に記入です。


 トランスは、全部塗り直さないと色が合わないので、出力トランスも外します。ネームプレートがないので意外と容易かもしれません。もしかしたら、プレートを貼っても格好良いかな?まぁオリジナルがベストというところでしょうか。
 このトランスは、カバータイプなので残念ながら、ラグ板式には改造できそうもありません。どうしようもないと思いつつ、分解してみると中から端子が出てきました。電源トランスのリード線は、劣化で皮膜が硬くなっていたのでラッキー!簡単に交換できそうです。出力トランスも内部の端子式でした。


◇シャシの再塗装◇

上が塗装前で下が塗装後

ちょっとサビが出ていただけなんですけど・・・


 再度、トランスを取り付ければ、ちょちょいのちょいで終わりのハズでございますが・・・・?
 塗るつもりはさらさら無かったのですが、いつとなく何処からか、ぼそぼそと悪魔のようなささやきが・・・「シャシーは〜〜?」と、ぼそぼそ・・・
 まあ、良いっか〜!リベットとちょっと(沢山ですが)線を外せばゴソッと抜けるパーツ類だし、ちょっと手間が掛かるだけだしー、とシャシも再塗装することにしました。させられました。とも言う。
 シャシの塗装は簡単手抜きのシャンパンゴールド!(シャンペンゴールドともいいます。)


◇レタリング◇

塗装すれば消えてしまいます。あたりまえですが・・・


 入力のRCA端子は年代の割にピカピカです。くすみすらありません。確か、扉付きのラックだったので保管状況が良かったのでしょう。
 しかし、再塗装で入力端子の文字が消えてしまいました。そこで、またまたレタリングさんの登場ということになります。
 レタリングは、サンハヤトさんが有名処ですが、その他のメーカーにもあります。自作派が減ってしまった今では、種類が減ってしまったかもしれません。
 文字入れが終わりましたら必ずコーティングをします。何故かというと触ると取れ易いから・・・・


◇コンデンサーの交換等◇

レトロなオリジナルを狙う為、大きく変更しません


 調べてみると、このアンプはメーカーの最大設計規格で設計されています。6BQ5ppで最大20W、無歪みで18Wとなっているようで球の限界?でドライブされています。
 オリジナルは、プレートに300Vという高圧が印加されているようです。最初に直したときは知らなかったので、抵抗でドロップして250Vにしていました。
 というのも、この球なら安全圏で250Vと信じていたからです。でも、メーカーとしては最大出力優先で設計されていたようです。
 さて、ここで悩むのが球の寿命です。無闇に高圧を印加するのは、真空管の寿命に大きく影響します。となると、250Vでパワーを10Wそこそこにして気軽に楽しむという選択になりますが・・・。
 ところが、250Vだと今度は、EQアンプのヒーター、それにバイアス電圧に問題が出ます。
 というのもこのアンプは、ハム防止の為、6BQ5のカソード電圧を利用して直流点火としてあるのです。それに、バイアスまで取り出しています。
 前回は、AUXだけでの試験でしたし、気にもしていませんでした。おそらくバイアスも合っていなかったのでロスだらけだったと・・・・


◇300V印加!◇

MT管でもこの灯りはいいものです。


 あれこれ考えるより、データーを調べる方が手っ取り早いので、色々 拾い出して調べるとこの球は、意外と丈夫な球のようです。
 この300Vドライブは、アマチュアにしてみればあまり一般ではないようですが、業界では当たり前のように採用されていることが分かりました。中には320Vなんてのもありました。
 となると、電圧を下げて出力トランスやバイアスをあれこれ調整するのも、あんまし良い手ではなさそうです。
 どおりで、250Vだと遠い昔に音楽室で聞いた迫力音と感じが違うわけです。鳴留歩道ー!
 やっぱり、オリジナルで・・・・子供の頃に聞いたど迫力が再現されるのかな?と期待を込めつつ、ほぼ元通りに・・・と方針を決めました。
 そして、耐圧不足のコンデンサー交換とPAの給電方法に若干手を入れました。その他のトラブルは、VRの接触不良(ガリ除去)です。


 VRのガリ掃除で分かりましたが、隣のCHに音飛びが生じていました。

共通のカソード抵抗

 この音飛び、つまり回り込みは最初、共通になっているPAのカソードからだとばかり思っていました。
 そして、ここを分離すれば何とかなるだろうと悩んでいました。しかし、ここはヒーターを灯す電流を稼ぐ為、意図的に共通にしてあます。
 そうなると、カソードを左右分けるのは簡単にはいきません。更にバイアスまで関係するのです。なんといってもこのギチギチの内部にどうやって二つも整流回路を組み込むかが、大きな課題でした。


  しかし、前回直したはずのVRのガリが気になっていたので、先にVRの掃除をしました。
 そしたら左右のセパレーションも良くなったのです。転げ落ちたショックで、VRの何処か浮いていたのかもしれません?
 どういう訳か音の飛び込みも無くなりました。でも・・・・今度はノイズがちょっと増加しました。
 最初は、全く気にならなかったのですが、このVRが正常になった為、昔ながらの球アンプのノイズまで復活したようです。ただし、SPに耳を近づけないと良く判りません。
 これを減らすなら、ワンポイントアースかな?これはアースポイントが沢山あるメーカー独自の手法です。ノイズが多くて当たり前だとか・・・?


◇完  成◇

TRIOの真空管プリメイン・・・今となっては懐かしい


 ケースが潰れたので改めて手を入れたものですが、これは正解だったようです。
 スピーカーをつなぎ聞いてみれば当初とはえらい違いです。小型BOXでもまずまずの感じでドライブしてくれます。音色は当然、昔聞いたと思う柔らかいツンツンこないやさしい音色を奏でてくれます。
 ポールモーリアのようなイージーリスニングがとっても似合う感じです。「裸足のイサドラ」なんか良い感じ!勿論、ウッドベースも力強く弾いてくれました。
 EQは流石に真空管で、残留ノイズはトランジスターに到底敵いません。暖める為に熱雑音がどうしても発生するからです。直流だろうが交流だろうが、ヒータを暖めないと働いてくれないが普通の真空管だから・・・
 回路的には、大きく手を入れていませんが、注意すべきところは、バイアス抵抗やカソード抵抗は誤差の少ない信頼性のあるパーツを選ぶことが重要ということです。こういうアンプは、バイアスが狂うとPAに大きな負担がかかります。


◇真上からと底板◇

底板も歪んでいましたが、平らに直して同系色に再塗装しました。


【最後に】
 ドライバーを改良したりすればもっと新鮮な音がするかもしれませんが、クラッシックコンポーネントと、あの頃を求め極力オリジナルに拘ってみました。
 しかし、固定バイアスでパワーを稼いでいることもあるかもしれませんが、5極管ppの威力でしょか。この堂々とした、鳴りっぷりには驚きました。流石にトリオさん・・・・2時間余りも聞き込んでしまいました。


そして、また倉庫でネムネム・・・

おしまい

<2009.01.19>

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