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◇CRF−230B◇


SONY ワールド・ゾーン(その2)


 しばらくしてTrが届いたので早速交換してみました。
 おー!おっきい音になった。これで、なからAMとFMの音量バランスが取れました。もし手に入らなければ、もう1本Trを使ってAF段の増設しかありません。ヨカッタヨカッタということで・・・


 これで中身は、全部終了・・・・と元に戻し始め、Sメーターを取り付けてみると、FMだけ針が振れないのです。あれ?
 エミッターから電圧も出てるし、ちゃんと受信もしてるし変です。キャリアコントロールが変なのかな・・・と熱でポーとした頭で悩みました。丁度、季節の変わり目、暑くなったり寒かったりで風邪をひいてしまったのです。


◇動 い た!◇

笑ってごまかす・・・・


 Sメーターが動かない理由!それはそれは話せば長いことながら・・・
 まず始めにですが、受信した信号はファイナルIFT段の後に検波される時に信号の強さによって前段Trの電流が大きく変化します。
 この電流の変化を利用してSメーターを動かしているのです。その為、各段のIFTは、きちんと調整が取れていることが要件です。ずれていると増幅率が低下してこの電流変化を読み取ることが出来ません。
 またTrは、以外とバラツキが多く、IF段のデバイスを交換した際は必ず再調整をしなければならないのです。え〜と・・何かしたっけ???私は、だぁ〜れ?ここは何処??
 体調不良のときは、こういうことをやらない方が良いということを悟りました。


◇箱に入れる◇

パネルは、まだですが、とりあえず箱入れ


 周波数調整は、フイルムダイアルのフレーム横に溝が切ってあり、ここがゼロ点になります。つまりパネルを付けなくてもピッタリ調整できるようになっています。
 調整も終わり、ちゃんと短波帯も受信してくれます。ビギナー用のハム機器にかなり近いような感度?でまずまずと感じます。
 箱に入れて早速受信してみれば、流石です。大きな音でラジオ放送が流れてきました。また、付いていたSPが気になっていたので、ナショナルの2200と音色比べをしてみました。
 結果は、やっぱりSONYの音です。ちょっと硬めかな?好みによりますが、音色はやさしいパナソニックに軍配です。 でも、使いやすさは4チューナー搭載のワールドゾーン!迫力も当然重たいワールドゾーン!


◇ちょっと聞き比べ◇

ラジオの王様もパネルがないので、まだ裸の王様・・・


 裸の王様ではあまりにも・・・塗料の剥がれたパネルの再塗装と文字入れとなります。
 しかし、問題は文字です。矢印とか特殊なラインはありませんので、自分好みのスタイルとなります。
 それでも見栄えは良くなるのでパネルの研磨に塗装と作業を進めます。


◇塗料が浮いてしまったパネル◇

再塗装の為、パネルを分解します。


 せっかくの高級ラジオです。ポコポコ塗料が浮いたパネルではみっともありません。
 40年近くも前のラジオですから、当然、パネルなどの補修パーツは手に入る訳もなく、自分でなんとか体裁を整えるしかありません。
 それなりにするなら再塗装!ということでアクリル板も外して塗装準備にかかります。残念ながら、塗装で消えてしまう文字はどうしようもありません。アマチュアで出来るのはインスタントレタリングくらいしかありません。


◇文字入れ◇

特殊ラインと矢印は無理です。


 入れてみれば文字だけでも受信機の雰囲気があります。のっぺらぼーより良いということで・・・・
 パネルはペーパー研磨後に再塗装、色はちょっと贅沢なパール塗装です。
 見たところ焼き付け塗装ではないようです。材質はアルミでアルマイト皮膜をしてあるようでツルツルしてました。これだと塗料が乗りにくいはずなのですが?
 塩気と油で塗料の皮膜がやられていましたので一通りペーパー処理をして再塗装としました。


磨いたツマミ

 また一番厄介といっても過言ではないくらい面倒なところ、それはツマミ類です。
 同調ツマミは、外径が大きく掴み易いのですが、それ以外は小さくて掴みにくいものです。おまけにスリップ止めの細かな溝が切ってあり、びっしりと汚れが付着しています。
 これは、洗剤をぬるま湯で溶かし、しばらく浸けたままにしておいて根気よく歯ブラシでゴシゴシ擦ります。すごい汚れで水が真っ黒になりました。
 これで乾燥させれば完了です。汚れも取れてスッキリしました。37年間?の垢落とし!これだけツマミが汚れていたということは、普段からフロントカバーは付けていなかったと想像出来ます。それにしても汚かった〜!


 今回交換したのはTrが殆どですが、ムギ球も電圧が高かった為か4個切れていました。
 切れていたのは、前オーナーが普段聞いていたと思われるMW BANDとFM1のバックランプとメーターそしてACパイロットです。これも簡単に交換できるタイプではありませんでした。


◇バックランプの交換◇

フイルムダイアルを外したところ


交換した部品

 普段聞いていたメインBANDがMWとすれば、ここのOSCが弱っていたのもうなずけます。
 また、裏側の3.5mmジャックは、錆びていて取り外すとき割れてしまいました。手持ちのジャックで対応となりました。
 そしてDINコネクターは中側まで錆びて綺麗になりそうもありません。諦めて交換としました。
 半固定ボリュームも完全に御釈迦です。どこまで回しても抵抗値が変化しません。接触不良かと思い掃除しましたが、一向に変化がありません。どうも抵抗体の不良のようです。


 
 ここだけ見るとテープレコーダーの雰囲気なんです。まさかこんな大きなTrラジオとは思いませんでした。


 

◇後部端子群◇

最初に目が留まったところ


 AC電源は、SONYの古典型4Pプラグで、4本のうち2本はDC入力用です。このプラグって確かデンスケというカセットデッキにも使われていたような?
 DINは録音端子で3.5mmジャックと2系統あります。他はMPXアダプター用の出力端子とSP EXITです。
 それに簡易アンプになるAUX端子があります。この入力端子は、他機器の実験等になかなか便利です。


◇交換したロットアンテナ◇

ポップアップしてくれませんでしたが・・・


 ロッドアンテナも油とかサビで真っ黒でした。一通り磨いてみたのですが、FMのロッドアンテナは押し込んだら引き出せなくなります。
 こういう構造かと思えば、短波用と同じで、ポップアップ機能が組み込まれているそうです。
 どうも内部でコテコテに固まって飛び出さなくなってしまったようです。復活するかな?とシリコンオイルをタップリと充填してしばらく様子を見ましたが、真っ黒なOILが出てくるだけで変化なし・・・
 このポップアップメカは、付け根に組み込まれているのでカットして修理というわけにいきません。付け根は、先端と違い一番力がかかります。専用のカシメる機械がない限りアマチュアには修理不可能です。
 このポップアップは復活しそうもないので諦めていました。ところがところが、OMさんが何処から2本調達してくれたのです。それも同タイプのロッドアンテナ!感謝感謝これ以外の言葉が出てきません。ありがとうございました。これでパコン、ポコンと飛び出すようになりました。


 

◇SPグリル◇

再塗装しました


 ワールドゾーンのエンブレムが光るSPグリル!アルミサッシで囲まれた高級感溢れるこのグリルはなかなかです。アルミのパンチングでもサランネットでも似合いそう・・・・
 そしてアンプもパワーがあり、キャビネットの約1/3弱を占めるSP BOXと相まって低音もしっかり再生してくれます。ここは、付着した油分で点々と変色していたので擬似色で再塗装しました。


◇記念撮影◇

疲れましたが、お陰様で完成となりました。


 ワールドゾーン・・・それはトランジスターラジオの最高峰といわれるものらしいです。性能といい、大きさ、重さそしてこの風格は「King of the radio receiver」そのものです。そして、それに付随して価格も・・・
 このあとに発売されたスカイセンサー5500や同期のワールドボーイを10台購入しても、お釣りがくるような価格で、当時、とてもとても庶民に手の届くようなラジオでないことが分かります。本当にびっくりです。
 こうして実際に手に取り、操作してみれば実感する。とても素晴らしいラジオであることは間違いないでしょう。
 ただし1970年代のレベルであり、最近のラジオとは比較にならないかもしれません。長閑な時代のアナログラジオでした。


 最後になりますが、資料や情報等をお知らせ頂きましたOM各位に厚く御礼申し上げます。お陰様でなんとか作動するようになりました。


<2008.11.07>


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