【1】 【2】 【3】 【4】 【5】


□山へ訪ねて来たAnritsu-5904C Part 1


 以前、ポンコツの真空管式の業務用受信機を磨き込んで喜んでいました。これは、飾っておいてもなかなかの雰囲気で、時折ラジオ番組を聞いては楽しんでいます。
 そうこうして楽しんでいると、何処から聞いたのか知りませんが直して〜と我が家にアンリツさんが訪ねてくることになりました。なんでもごちゃごちゃに手を加えられていて大変な事になっているかわいそうなアンリツさんだそうです。
 直してといわれても、この頃は暑い盛りでハンダごてなど握れる状態ではありません。まだ暑くて駄目ですよ〜。といっている間に時は流れていきました。
 気がつけば、いつしか秋の気配が漂い始めていたのです。そんなある日の昼下がりのこと、運送屋さんが何やら重たそうに運んで来たではありませんか。
それが悪戦苦闘の始まりでした・・・・・。


◇ひょっこり訪ねてきたアンリツさん◇

凄い造りみたいです。私なんかに手に負えるのかしらん・・・?


 手を加えてあるということなので、ざっと調べてみたら、プロダクト検波部のところでした。後に、よくよく調べてみるとそうではなく、IF-OUT(外部出力用)部分を殺してSメーターアンプを組み込んだようです。何故こんな事をしたのかは全く不明、Sメーターなら違う方法もあっただろうに・・・・
さて、眺めてみると、結構古めかしいレトロチックなデザインのマスクに目を惹かれます。扇ダイアルが2個並ぶ7BANDで、昭和38年の製造です。筐体は、下地にさび止め処理をした高級塗装のシルバーグレーのハンマーネット、かなり分厚い塗装のようです。
 パネルとケースの固定方法は、バネ式のロックヒンジで、この部分だけ横に飛び出ています。メンテナンスには便利ですが、個人的にデザイン面で好感が持てません。なんとなく取ってしまいたい気分に駆られてしまうのは私だけかな?と・・・クロームのリベットで硬そうです。


◇アンリツさんの入れ物◇

シルバーグレーのハンマーネット塗装、キズだらけでサビも・・・


  やはり、これも海上に出ていたのでしょうか。それとも海岸近くの基地局かな?固定バンドに付いていた水晶を見ると、漁業波の1699kHzや巡視船や海上保安庁の2245kHzなどが付いています。
 サビの具合から見ると歳月の割に少なく、程度は良い方かもしれません・・・。となるとやはり基地局用の可能性が高いみたいです。
 依頼された方からは「回路の一部が改造され、6U8が12AU7に交換されていますので、オリジナルの回路に戻して下さい。その他クリーニング等々・・・」ということでした。
 筐体は、天板が外れるようになっています。比較的薄めで強度適に問題がありそうです。シャシ横のフレームもL型アングルでフニャフニャします。といってもアマチュア機より丈夫な造りです。届いたときはゴム足が2個しか付いていませんでした。それも対角線上に・・


◇固定波水晶(掃除後)◇

5個ついていました。1699kHz、2245kHzが見える。


 さて、どうやって分解すれば掃除がし易くなるのかな?と一通り眺めます。まず問題は、内蔵された電源部です。
 オリジナルは、外付け電源だったので苦労して内蔵させたみたいです。これは、後々非常によろしくない状態になることを想像してなかったようです。
 目視で、サビの状態を見るとVF0側部とシャシ後部が特に酷い状態です。もしかしたら機器の入れ替えで野外にしばらく放り出されていたのかもしれません。そんな感じもします。


◇赤 さ び◇

メッキも食い破る潮風・・・


 サビの塊みたいな恐ろしいラジオばかり見ている私にとっては、この程度のサビは、まだ良い方だと思います??まだまだ大丈夫、なんとかなりそうみたいな感じです。
 乏しい今までの経験からすると潮風でやられたラジオは、ツマミでとても苦労します。でも、今回は簡単に外れたし、なんとかなりそうかな〜と?改造されてるから、わかんないけど・・・・。


◇内蔵電源◇

これは上手くないぞーです。


 真空管の熱で電源トランスのワニスが蒸発拡散してシャーシにこびりついて黄ばんだようです。たばこのヤニもあるかもしれません。これは、アルコールで拭いて洗剤を使い落としました。
 サビは、ペーパーで落とします。磨いていて驚いたのは、下から銅が出てきたことです。シールド効果もさることながら、シャーシ類は、しっかりメッキを施してあります。つや消しの独特の光沢メッキです。まさか銀メッキなどということはないと思いますが・・・。これだけの処理を施しても食い破る潮風は驚異的なものがあります。塩って凄いんですね〜。なめたらしょっぱいです。


◇内蔵の電源トランスを撤去◇

IFTも潰れて、調整ネジも潰れています。


 内蔵してあった電源トランスは、IFT等の調整が出来ないような最悪の場所についていました。邪魔なので、トランスを外したら、IFTの頭が潰れていました。取付強度が不十分だったということです。
 ケミコンもブリッジ整流の後、大容量のケミコンで整流、240Vのブリッジでいきなり給電してあります。
 指定値は、150V。なのに300V近くを印加していたということになります。信じられないけどしてあった!
 これは、どこかに影響を与えているはず・・・やばい感じです。部品が逝かれてなければいいのですが・・・。不安が過ぎるアンリツさん。でも、作業は進行形。主要部品が駄目なら最悪お飾りかも?5スパにしようか・・・・な〜んて。


◇RF−VFOブロックを取り外し◇

重たい部分を先に取り外します。


 業務用受信機を分解するのは初めてではありませんが、どれも堅牢で複雑な造りです。ありがたい事といえば、各ブロックごとに取り外しが出来ることです。でも、その取付方は複雑だということも覚えておきましょう。とにかくややこしいのです。パズル型受信機とでも・・・・?
 まずは、ウエイトを占めるRF−VFO部を取り外すことからはじめました。これを外すと、とても軽くなり掃除が容易になります。こうして、全体を見ながら作業行程を一通り検討します。基本は外しても支障のないところは全て外すということです。
 ただし、複雑な機械なので元に戻らなくなる恐れがあります。始めての方は、ゴミとなっても良いくらいの覚悟が必要かもしれません・・・・・


◇ダイアルメカ部(掃除前)◇

ベアリングが紛失してずれたまま使っていたのかな?


 シャーシは、鉄製でVFO部分は鋳物でしょうか、メチャクチャ重たいものです。ダイアルメカ部はステンレスのようです。
 調べてみたらダイアルシャフトを回すとなんとなくタッチが変です。ここは操作上の心臓部みたいなもの。ヤバイかな?と・・・分解してみれば案の定、金属屑がいっぱい貯まっています。そしてOILで異様なくらいベタベタです。軸受けのベアリングもありません。駄目かもしれない?こまっちゃうな〜!


◇なんとかメカ復活◇

ピカピカになったダイアルメカ


 このようにベアリングが無くなることは良くあるようで強い衝撃を受けたときに外れてしまうようです。このアンリツさんも例外ではなく、強い衝撃を受けた形跡がありました。民生機なら再生不可能になるくらいの衝撃だったと想像します。
恐らく、前々々々?オーナーは、こんな事とは知らずに注油して使っていたのでしょう。と勝手に想像してます。断定は出来ないことですし・・・。


◇VFO部も復活◇

全体の2/3を占めるくらいメチャクチャ重たいブロックです。


 メカは、取り外して灯油で洗いました。これで余分な油に汚れそして金属屑が綺麗に落ちます。ベアリングは偶然にも壊れたロータリーSWのものがピッタリ!これを使うことにしました。
 乾燥後したら、各ギアにグリスを注しますが、そこら辺に付けるとベタベタして大変なことになりますから注意してグリスアップです。
 分解掃除で回転もスムーズになりました。ギアは、磨り減ってても2枚ギアなので、まだまだ十分使えそうです。ヨカッタ、ヨカッタ!


ヨカッタ、ヨカッタということで次頁へ続く・・・


<2007.10.12>


【1】 【2】 【3】 【4】 【5】

【ラジオHome】