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□山へ訪ねて来たAnritsu-5904C Part 5□
終  章


 聞こえないのでつまんない〜!なんてのんきなことは言ってられませんので、なんとかせねばせねば・・・・
 何か変化がないかとANTをつないだり離したり・・・そしたらチリチリとわずかながら音がします。今度は、VRを最大にしてダイアルを回してみれば、ほんの微かにラジオ放送が聞こえます。となると、一応受信しているわけだから、IFT各段の出力が怪しいみたいです。
 これを調べるには、オシロで各段の波形を見れば何処が悪いか簡単に目処をつけられるので、ブローブを3本各段のIFTの出力側にちょこちょこ取り付けていけば・・・あれ?あれ〜?波形を見る前に解っちゃったりして??あは、こんなのばっかり・・・しょぼん!
 さほど苦労することもなく、再度、電源ON!・・・さすが高1中3、未調整とはいえ良く聞こえます。そして定電圧給電の配線を直してと・・・IFTの調整と、周波数、感度調整を済ませばバッチリになるはずです。


◇受信大成功!◇

やったやった!原因はご想像にお任せします。


 調整は、普通の5球スーパーと同じ要領で済ませました。業務用機器なので、バンドパスフィルターも何ヶ所かありますが、スペアナが無いので下手に触れません。通過帯域が狂っても面白くありませんのでそのままとしてあります。
 初めにIFTの調整ですが、これは455KHzでなく199KHzです。これを最大感度になるように調整、そして7BAND分の周波数合わせです。これは、カバーを外してOSCコイルを調整しますが、調整してみると全BAND低めになっていました。
 続いてANTとRFの感度調整です。ここは、かなり狂っていました。調整したらガンガン聞こえます。さすが高1中3です。凄いです。


◇Sメーターの調整◇

前々々オーナーの苦心作?


 このアンリツ受信機には、元々Sメーターは付いていません。前々々オーナーの(大)苦労の作?IF OUT回路を潰し、12AU7を使ってメーターアンプを付けたようです。
 ここは、オリジナルの6U8に戻したので、このメーターアンプは働いたのかどうか分かりませんが、このままではメーターは使えません。となると違う方法でということになりますが、一番簡単な方法で9R42Jに使われているような回路でRF段から引き出すことにしました。
 取り付けたところ、調子よく動くと喜んでいましたが、IF GAINを絞るとマイナス側に針が振り切ってしまいます。これでは、調子よく動くといえません。
 困ったなぁーと、考えればとっても簡単な方法がありました。ダイオードを直列に入れてマイナス側に振らないようにすれば良いだけのこと・・・お飾りのメーターですが、それらしく振れた方が楽しいと思います。


◇メーターを取り付けました。◇

狭いところに付きますが、仕方ないのです。


 メーターの場所は少し窮屈ですが、ここに取り付けられていたのでどうしようもありません。チューニングの時、少々邪魔になるかもしれません。それでも、アマチュアはメーターを付けたいのです。なんとしても・・・・でも、無いとほんとにスッキリしているような。プロ機候のマスクかな?
 中身も、こうしてみてみると、作りはやっぱり業務機です。TRIOとかのアマチュア機にはない独特の雰囲気があります。こういう業務機のコレクターがいてもあたりまえのような気がします。


◇最終仕上げ◇

キズ防止の為、サイドフレームに保護材を・・・


 このアンリツのケースには、本体を押し込む時のガイドレールがありません。斜めに差し込んだり右寄りになったりしてしまいます。
 せめてガイドレールが付いていれば、その部分だけ擦れるだけなので、そうも苦になりませんが、このアンリツさんはどうも具合が悪いようです。こういうところは民生機並?ブツブツ言っても仕方ないのでフレームをフエルトやシ−ルテープで対処することにしましたが、それでも擦れます。


◇ケースに納める◇

さぁ、完成だ。乾杯!こんぶ茶で・・・


 やっと終わりました。しばらく様子見に電源を入れて・・・ず〜っと、ず〜っと試していたい?というと怒られるので、しばらく聞いてから発送することにします。
 ちょっと高域のノイズが気になる感じかな?コンデンサでHightカットしようかなと思います。気に入らなければコンデンサを外せば済むことです。依頼された方は多分、電子回路のノウハウを熟知されていらっしゃる方だし・・・多少のことは手を入れられることと思います。
 それはそうと、ボリュームシャフトに触るとブゥ〜ンと音が出ます。どうもボリュームが浮いているようです。普通は締め付ければアースされるのですが、塗装をしっかりした為か、アースが取れない模様・・・。別途専用のアースを引くことにしました。 
 SP Boxは、あまりにものっぺらぼーだったので気休めですが、ちょっとレタリングをしました。入れた文字は、「AAR-5904P」です。最後の「P」は、POWERのPのつもりです。茶目っ気ということで・・・


◇記念撮影(斜めから)◇

セパレート型受信機そのもの


 始めて見る受信機でしたが、今回は回路図等取扱説明書がありましたので非常に助かりました。あるとないとでは大違いです。また、OMさん各位にアドバイスを頂きなんとか、ここまで仕上げることが出来ました。感謝申し上げます。
 球の構成は、RF/6CB6-MIX1/6U8-1stOSC/6BA6-MIX2/6BA6-2ndOSC/6BA6-1stIF/6BA6 -2ndIF/6BA6-3rdIF/6BA6-BFO/6BA6-DAT/6AV6-NL&IFOUT/6U8-PA/6AQ5の12球です。
 そして電源部は5Y3GTとVR150で安定化したので全部で14球式となりました。SSB/CWは、X-talを使ったフィルターで2段階に通過帯域が変えられます。勿論、バイパスもあります。ラジオ放送は、バイパスさせた方がうんと聞きやすくなります。


◇ブ ロ ッ ク 図◇

こんな構成です。4BANDからはダブルスーパーになります。


 これといって特徴はないような普通の回路かな?業務機の・・・
 腕が達者で裕福な方は別として、新たに作れといわれてもアマチュアには到底無理なものです。いいとこコイルパックを使って高1中2〜中3がやっとこさかな?なんたって使われている部品の質が全然違いますから・・・


◇記念撮影(後部)◇

SPも集合配線でスッキリ


 ハムは、スピーカーに耳を近づけるとほんの僅か聞こえますが、気になるレベルではありません。また、心配した回り込みハムは無くて一安心でした。電源と外部スピーカーを組み合わせるとこのハムにとても悩まされることがあります。
 これは、電源SWを入れると同時にSPからブゥ〜〜ンと強く聞こえるので回り込みだとすぐ判ります。対処としてリード線の引き回しを変えたりします。どうしても消えないときはトランスの向きを変えたり、シールドで覆う等の対処が必要かもしれません。
 また、接続が簡単なように8PINコネクターで集合配線式としました。このケーブルを取付てプラグをコンセントに差し込めば働きます。ANTも忘れずに・・・。


◇記念撮影(受信中)◇


 個人的好みもありますが、こうして眺めてみると良い感じです。いかにも受信機!それも存在感があるような・・・
 業務用受信機といえども真空管受信機は、今のアマチュア無線機にさえ敵いません。感度、分離、選択度全てに劣ります。でもこうして灯を入れ、流れてくる真空管の音・・・とてもやさしく疲れません。くつろぎのラジオタイムを味わうには最高だと思います。


 振り返ってみれば、このアンリツさんが届いたのは9月の末、それから約1月半、気がつけば晩秋の候・・・・
 私に出来るのかな?と不安はいっぱいでした。気分が乗らなければ、何もしない日もありました。一日によくやって2時間程度、夜なべ仕事もありました。
 そして、一番手間のかかる塗装は、お天気次第というありさまでした。塗装は、何度も塗って皮膜を厚くしますので完全乾燥に10日ぐらいはかかります。タイミングが悪いと、次の作業に取りかかれない部分も生じてしまいます。
 最後になりますが、業務用機は2度と請けない事と決めました。だって費用はとても嵩むし、とっても面倒ですもん。こりごり肩こり・・・

 アドバイスをいただきましたOMさんに感謝申し上げます。


やれやれ・・・です。おしまい


<2007.11.18>


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